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白百合の章24

 ――薬が効くのに、一時間ほどかかるらしい。そういうわけで、僕は薬を飲んで別室で待機することになった。こうしてしっかりと櫨に抱かれる準備をするというのも気恥ずかしいが、受け入れるにほかはない。 「うわ、吾亦紅……大丈夫、なのか」  結論から言えば――櫨を待機している一時間は、地獄のようだった。玉桂が憎たらしいことに、僕に薬を多めに盛ってきたのである。妖術が効かなかったから念のため……ということらしが、それが良くなかった。効きすぎたのだ。本来一時間で徐々に効果がでるところを、十分ほど経ったところで効果が出始めて、そこからどんどん効果が上がってゆく。着ている着物にすれただけでビクついてしまうくらいに全身が敏感になり、ビクついた瞬間にまた別のところがすれて――まるで見えぬ誰かに責められ続けているような感覚を覚え、一人でいるというのに変な声が漏れてしまう。当たり前のように僕のものは芯をもち、先からとろとろと愛液が零れ落ちて、それを吸った下着がずっしりと重くなってゆくほど。そして――そうまで感じているのに、僕は身動きが取れないように縄で拘束されていたのだ。天井から吊るされ、そう――自慰ができないように。  部屋に入ってきた櫨は、僕を見た瞬間にかあっと顔を赤らめた。僕の精のにおいがほのかにする、妙に湿っぽい空気。部屋の中心で縛り上げられ一人悶える、僕。とんでもない痴態を見せつけられた櫨が戸惑うのは当然のことだった。 「はぜ、……ぁ、……みないで、……ぅ、んっ……」 「……なぜ。そんなにも淫らなおまえ、初めて見た。艶めかしいぞ、吾亦紅……美しい」 「あっ……だめ、……」  櫨に恥ずかしい姿を見られたくなくて、僕は勝手に出てくる声を堪えたが、それは意味のない行動だった。櫨はずんずんと僕に近づいてきて、僕の縄を解き、崩れ落ちた僕の体を抱き上げる。その、瞬間だ。僕は、櫨の逞しい筋肉と、匂いを全身で感じて――イってしまったのである。 「んンッ……! ぅんっ……ぁ、……」  声は出ないようにぎゅっと唇を結んで我慢したが、体が激しく震え、達したということが一目瞭然だった。堅くなっていたものも弾けて、下着が精液でぐちゃぐちゃになってしまう。 「吾亦紅……逝った、のか……?」 「う、うう……」 「……、ああ、吾亦紅……なんと、愛おしい」  こんなにも恥ずかしい思いをしたのは初めてだった。いくら恋人であろうと、ここまでのはしたない姿を櫨には見せたくなかった。こんな――淫乱な姿など。  恥ずかしさのあまり泣き出した僕の頭を、櫨は嗜めるように撫でてきた。それすらも感じてしまう僕は、嗚咽なのか嬌声なのかわからない声をあげてしまう。 「ずっと……この状態で、俺がくるのを待っていたのか」 「……あ、……はぁ、……ち、ちが……僕は、こんな……」 「欲しかったか、これが……」 「あ、……」  櫨の声がわずかに掠れる。ああ……櫨も、興奮している。  櫨はじっとりと熱を孕んだ目で僕を見つめて、そして……ぼるん、とその巨大な一物をとりだした。赤黒く、太い血管が波打ち、熱気を纏った……僕を孕ませるための肉棒。それが視界に入った瞬間、は、と息が詰まるような感覚を覚えた。そして、視界に星が散り、下腹部がきゅきゅきゅ、と締まって――…… 「あっ……、は、ぁッ――……ンっ……」 「吾亦紅……、」  ぷし、と僕のものから潮が吹きだした。  僕は櫨の勃起した肉棒を見ただけで、果ててしまったのである。僕は天井を仰ぎ、涙を流しながら……自らの潮を浴びて、絶頂していた。 「そんなに、そんなに……俺のこれが、恋しかったか」 「あっ……はぁんっ……あ、……あ、あ、……」  櫨は爛欄とした目つきをして笑ったかと思うと、僕をどた、と押し倒してくる。そして、腰を振ってその巨大すぎる一物を暴れさせた。ぶるん、ぶるん、と生き物のように暴れるそれは、どん、どん、と僕の腹に何度もたたきつけられる。もう、櫨という雄に屈服してしまった僕は、その辱めすらも快楽を感じて、腹が一物にぶたれるたびに悦びの声をあげた。 「あぁんっ……あぁっ……あ、はぁっ……ん……」 「はあ、はあ、……はやく、はやく……いれたい、吾亦紅を、これで……めちゃくちゃにしたい……」 「だめっ……だめぇっ……こわれちゃ、……こわれちゃう、からぁ……」 「はあ、……かわいい、吾亦紅……はあ、……はあ、……」  きっと――僕の呼気の中に、僕が飲まされた媚薬が溶け込んでいるに違いない。櫨の興奮っぷりも、凄まじいものだ。僕のはだけた着物を完全に剥ぎ取り、ぐしょぐしょになった下着を引きちぎり、そしてがしりと僕の脚を掴んで開脚させてくるその姿は獣のよう。暴力的な肉棒を震わせながら僕に襲い掛かってくる櫨の劣情に、僕の穴は蕩けてしまいそうになった。 「ほんとうに、入るのだろうか、……いたかったら、言うんだぞ、」 「はぁ……、はぁ……やだ、……いやだって、ばぁ……これ以上、感じたら、……」 「吾亦紅……、俺だけの、吾亦紅――……」 「あっ――……」  櫨は僕の制止を無視して、肉棒を僕の蕩けた尻の穴に押し当ててきた。そのあまりの巨大さに、やはり入るわけがない――そう思ったが。ぐ、と圧力を感じたその瞬間。僕は…… 「は、はぜぇっ――……」  すさまじい快楽に襲われて、意識を失いそうになった。ずぞぞ……と下半身全体を震わせるような悍ましい快楽の波が、下から這い上がってくる。僕の内臓という内臓が、快楽のあまり痙攣している。櫨のものにされる――……それだけが、頭の中に浮かんできて、僕は悦びのあまり声を失った。 「きつい、ああ、あつい、……はあ、はあ……われもこう、……はあ、」 「――……、っ、……ぁ、……」  腹が、苦しい。もう、僕はこの雄の怪物に抗えない。どんどん征服されてゆく。 「――くっ、……はあ、……おく、……奥に、ついたぞ、吾亦紅――……!」 「あっ――……は、……ぁあっ……!」  最奥までたどり着いた肉棒が、最後にずどんっ! と突き上げてきた。その衝撃で僕は一瞬本当に意識を飛ばしてしまって、そして……また、潮を噴き上げながら達してしまう。もうなにがなんだかわからなくなって、苦しくて苦しくて、それなのにおかしくなるくらいに気持ち良くて……僕が僕でなくなってしまいそうだった。 「はっ、はっ……はっ……はっ……」 「苦しい、か……吾亦紅……」 「あっ、うごかっ……うごかないでっ……おねがい、っ……あっ……あぁっ――……!」 「わるい、わるい、吾亦紅……腰が、止まらない……!」 「だめっ、だめぇっ! あっ、あっ、あっ、あっ」  ずんっ、ずんっ、と凄まじい衝撃が突き上げられた最奥から脳天まで一気に突き抜ける。僕は揺さぶられるままに揺さぶられて、本当の意味で肉棒に狂わせられていった。声を抑えようなんて意思は吹っ飛び、はしたない声をひっきりなしにあげてしまう。そして、押し込めていたはしたない願望も……口にしてしまう。 「もっと、もっと……! はぜ、……もっと……!」 「はあっ、はあっ、きもちいいか、吾亦紅、はあっ、はあっ」 「きもちいいっ、きもちいいっ……はぜの、もっと僕の奥にっ……」 「もっと、おく、だなっ……――ほらっ!」 「あっ……ひィッ――……!」 「ほらっ! ほらっ! もっと、声をだせっ、吾亦紅っ!」 「あぁあっ――! はぜっ、はぜぇっ――……!」  櫨に孕ませられたい、櫨に征服されたい、櫨にめちゃくちゃにされたい、櫨のものになりたい、……あふれんばかりの想いが、暴れ狂う快楽と混ざってどろどろになってゆく。僕の体はすでに感覚を失って、断続的にイキ続けていた。理性もなにもかもがなくなって、ただ、僕も櫨も……必死に、お互いを求めあう。 「すきっ……すき、すき……はぜ、すきっ……もっと、もっと……はぜ……」  最後は、聴覚も失っていた。櫨が言っている言葉も、僕自身が言っている言葉すらも、わからない。  ずどどど、と一気になかが満たされていく、今までとは違った苦しさに、射精されたのだとわかった。不思議と、その感覚だけはあった。本能で、櫨の精子を求めていたのかもしれない。 「はあ、……はあ、……吾亦紅……愛してる。ああ、よかった……これで、おまえと……幸せな、未来が……」  僕のなかをたっぷりと精液で満たした櫨は、なにやら泣きながら僕に抱き着いてきた。強烈な絶頂の余韻で何も考えられなくなっていた僕は、彼の言った言葉をうまく咀嚼することができなかったが、なんとなく、感じ取る。彼も、僕と同じ気持ちでいる。  僕と櫨の、永遠を望んでいる。
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