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白百合の章25

「ふわ……」 「……どうした、大あくびなんてして。キミ、ちゃんと寝ているのか」 「うん……」  ――櫨は、無事に閻魔大王の使いになることができた。これで、神性を持つことになった櫨は、男である僕を妻とし、僕との間に子を成すことができるのだが……肝心の、性交をする時間がない。そして、子を成したとしても櫨が子に構う時間がない。そう、閻魔大王の使いというのは、思った以上の激務のようだった。……というのも、櫨が担当することになった地区では、人手が足りていないらしい。本来であれば数人でやるはずのところを櫨が一人でやっているため、櫨に負担がかかっているようだった。  と、いうことなので。僕は、櫨の手助けをすべく、僕も閻魔大王の使いになることにした。しかし、僕は犯罪歴も凄まじい上にろくな育ちをしていないので頭が悪い。相当成績が良くなければ閻魔大王の使いにはなれない。僕は寝る暇も惜しんで勉強していたのだが、それは思った以上に僕の体の負担になってしまっていたらしい。 「体を壊しては元も子もないのだぞ。キミはこれから母になるのだから……」 「……ねえ、本当に僕は母になるの? 子供産めるの? この体で」 「なれる。不思議な話だがな」 「ふうん……」  櫨が家を空ける日々が続いたので、僕は玉桂の屋敷に入り浸ることが多くなった。一人で勉強ばかりしていると、気が狂いそうになってしまう。玉桂は僕のことを大層可愛がってくれたので、彼のそばにいるのは居心地が良かった。 「……まあ、そうだよね。一応? お母さんになるんだし? 体壊しちゃだめだよね。気晴らしに人間界にでも下りてみようかな~」 「ほお。人間界。いいんじゃないか。櫨がどういった世界を見ているのか、見てくるといい」 「うん……ちょっとだけ、行ってみる」 「ああ、そうだ。人間界に人食い鬼が出るという話があるから気を付けろ。まあ、キミなら大丈夫だろうが、一応」 「人食い鬼……へえ、そっか。気を付ける」  玉桂は僕を撫でて、優しい微笑みを浮かべている。  早く、櫨と家族になりたい。そして、たまにこうして玉桂のもとへ来て、話し相手になってもらう。今まででは考えることもできなかった未来地図に、僕は改めて変わったのだと実感する。

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