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灼の章2

「――ッ、」  飛び上がるようにして、詠は起床した。  今の夢は一体なんだろう。苦しくて、息ができなくて、胸が張り裂けそうで――寂しい、声。白百合の声に聞こえた、でも……彼女があんな風に喘ぐだろうか。きっと偶然にみた現実とはなんら関係のない夢だろう――詠はそう自分に言い聞かせて、ぼさぼさと乱れた髪の毛を手櫛で直す。  なんとなくいつもよりも体が暖かい――むしろ熱いような気がした。詠が首をかしげて布団をめくりあげれば―― 「……ッ、ひゃあ! 白百合さま!」 「……なんだ詠、騒がしいぞ……」  なかに、丸まって寝ていた白百合がいた。白百合は大層不機嫌そうに詠を見上げ、また何事もなかったように眠ってしまう。 「……白百合さま」  ……本当に、あの夢はただの夢?  いつもはこうして布団に入ってこない白百合がはいってきて、一緒に寝たから――彼女の、心の中を覗いてしまったのではないか。  詠はぐるぐると考えて、……そして、そっと白百合の頭を撫でる。きっと起きているときにこんなことをしたら怒られるだろうが……もしかしたら彼女は酷く弱い人なのかもしれない。そう思うと、思わずこうしてしまったのだった。

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