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灼の章6

「また、厄介事な気がするなあ」  ベッドにごろりと寝転がり呟く鈴懸。それを冷たい目で見下ろすのは、織だ。自分のベッドをこうも堂々と占領されたのでは、こうした顔をしてしまうのも仕方ない。 「愛人に捨てられた人間が元の妖怪だってよ。どうせまたどろどろしてるんじゃねえの」 「……まあ、そうかもな」  仕方なく、織はベッドの端に座る。鈴懸はどけるつもりがないらしく、視線をちらりと動かすのみ。 ――次の旅先が、決定する。「(あらたか)」という妖怪の住む、 藍摺(あいずり)の山という所だ。灼は、愛人に逃げられた男が精神を病み、死亡後妖怪に成り果てたものらしい。男は精神を病んだところで元々住んでいた村の住人に藍摺の山に投げ込まれ、そこで誰に看取られることもなく、亡くなった。男の遺体があった山小屋の有様は酷いものだったらしく、近づいた者は呪われて死ぬという噂である。  強い怨念を持つ妖怪は、強い妖力を持っている。また危険な旅になるだろうと二人は危惧したが、いかないというわけにもいかず。 「ま、俺様がいるから大丈夫だな! おまえは一人で無茶しようとすんなよ」 「……」  いくしかない、そうなれば鈴懸に頼るしかない。以前彼に庇われたことを思い返し、織はそう思う。変に自分ひとりで突っ走ってしまえばかえって彼が傷つく可能性もある。はじめから彼に頼っていたほうが、まだ安全なのかもしれない……そう考えて、そしてあることを思い出した。 「……そういえば……詠が先ほど貴方を見たって」 「え、俺? ああそういえば……ぶつかったんだよな。あの子は俺を見ることも触れることもできないと思ったからびっくりした」 「……貴方の力が戻ってきているってことじゃ?」 「ほう? なんだ、おまえ、俺のこと信じるようになってきたのか~?」 「えっ」  織以外の人間が、姿を見ることができるようになる。それは、鈴懸の力が戻ってきているということ。そして、それは織が鈴懸を信じるようになってきたということ。それに気づいた織は、自分の発言が急に恥ずかしくなって顔を赤らめてしまった。鈴懸本人に向かって、「あなたを信じています」と言っているようなものなのだから。そしてそれは決して嘘でもなかったのだから。 「もっと俺様を讃えてもいいんだぜ」 「あっ……」  恥ずかしくて言葉に詰まってしまった織を、鈴懸は引き寄せる。そのまま体を支えられなくなって倒れてしまった織は、鈴懸の上にどさりと覆いかぶさる形となってしまった。織が慌ててどけようとしたが、鈴懸ががしりと織の臀部を掴む。 「ちょっ……!」 「体に直接俺様の存在を覚えさせれば手っ取り早いと思うんだよなあ」 「ふっ、ふざけんな! 極力、俺はそういうことをしたくな、……ぅ、……ぁっ」  ぐ、と両手で尻肉を揉みしだかれる。同時に、強く腰を押し付けられる。大きく揉まれ、体がゆっさゆっさと揺さぶられ、そのたびに股間が鈴懸の腹部に擦れて、じんじんと熱い。 「お? 威勢良かったのに。どうした?」 「あっ……や、……うるさ、……はなせ、……ぁんっ……」 「感じてるのか? おまえ、俺に触られるのはもう大丈夫みたいだよな。中まで触ってやろうか?」 「かんじてないっ……! あっ……ばかっ……んんっ……」  織は鈴懸の着物をぎゅっと握り目をとじる。体が熱くなって、涙がでてくる。逃げればいいのに、なぜか逃げられない。このままで、いたい。 「ほら……」 「ひゃんっ……んっ、……ひぅ、……」  鈴懸が織の着物をめくり上げて、下着の上から秘部のこすった。孔をぐりぐりと指の腹でいじくってやる。きゅんっ、きゅんっ、とソコがヒクついて指を呑み込もうとするが、下着の布がそれを邪魔してしまう。  なぜこんなことをしているのだろう。自分からしておきながら、鈴懸はそんなことを思っていた。なんだか最近、織にちょっかいをかけるのが楽しくて仕方ない。必要のない戯れなのに……どうにも心が楽しそうに疼いてしまう。 「あっ……ん、ん……んー……」 「おねだりできたら中に挿れてやるぞ? ほら、俺様にねだれよ、織」 「ぜったい、……や、……ひっ、やあっ、んっ」 「ふ、可愛くねえの」  ぐいっと下着をひっぱりあげ、アソコに食い込ませる。そして、その状態で孔に指を三本ぐりぐりと押し込んだ。織はガクガクと体を震わせながらのけぞって、恍惚とした表情をしながら甲高い声を上げる。  ……それを、鈴懸は下から見上げ、ごくりと唾を呑んだ。喉に伝う汗、ぱさぱさと揺れる髪。悩ましげにひそめられた眉と、熱い吐息を吐く唇。 「あっ……あぁ――……」  びくびくっ、と震え、織は達する。力が抜けてぱたりと再び鈴懸の上に倒れ込めば、その衝撃で鈴懸はハッと目を覚ました。一瞬、感じている織に見惚れて、魂が飛んでいた。あまりの絶景にくらくらと目眩を覚えていた。 ――危なかった。何かが、危なかった。  織に目を奪われていたなんて、ありえないこと。鈴懸は一寸前の自分の状態に驚きながらも、何事もなかったようにしたり顔で笑ってみせる。 「感じてないって言ってたのに、イッちゃったな、織」 「うっ……うるさい! ケダモノ!」 「ふん、なんとでも言え。おまえはそのまま俺様の虜になって、力の糧になってくれればいいんだよ」 「誰がおまえの虜なんかになるか!」  織がきゃんきゃんと吠える。顔を真っ赤にして。  鈴懸は「黙れ」と言う代わりに織を抱き込めた。そうすれば織は素直に口を閉ざし、固まってしまう。イッたばかりの体は熱く、呼吸も荒い。はあはあと熱っぽい息を吐く織を抱きしめて、鈴懸はため息をつく。  自分は織をどうしたいんだろう。なぜ織に嫌悪感を抱いているのか、それなのになぜ織に構いたくなるのか。それがわからないから、こうしてもやもやとしてしまう。 「……俺様をやきもきさせるなんて、生意気な人間だな」 「……?」  でもひとつ、わかる。  こうして彼に触れていると、心が落ち着くのだ。

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