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灼の章12
「みんな、貴方のことを忘れちゃったんだ」
醜い姿をした僕に、彼女は言う。彼女は美しく、それでいて妖艶。そして、浮世離れをしている。
「私も、誰の目にも映っていない。貴方と一緒だよ」
「まさか。君は僕と違って、美しいのに」
「見た目なんて関係ない。私は、人間たちから迫害されて生きていた。だからね、灼」
彼女の名は――咲耶。まるで人間ではないような雰囲気、しかしその瞳に湛えるのは人間のような孤独。
僕は、彼女に手をのばす。彼女なら――僕を、救ってくれる。
「私の熱をあげる。貴方の熱をちょうだい。孤独なんかじゃないって、教えてあげる」
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