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覚の章9

 玉桂が部屋を去って約一時間。代るがわるに覚たちに犯された織は、もう体力の限界に陥っていた。  数匹の覚が織の体を押さえつけて、そして一体が織を犯す。その間も他の覚は織の体に肉棒を擦りつけたり、握らせて扱かせたりしているため、織の体は覚の精液でべたべただ。 「あっ、……あっ、あっ、あっ……」  意識朦朧状態の織は、与えられる快楽のままに喘いでいた。体力は空っぽなのに、覚の凶悪な肉棒がすさまじい快楽を織に注ぎ込んできて、体が勝手に反応してしまう。苦しくて、苦しくて……それでいて、気持ち悪くて。それでも、きもちよくて。自分を見失いそうになって。織は、消えてしまいたいと――そんなことをぼんやりと考えていた。 「んッ――……! あっ……は、……」  体が、びくんっ、と跳ねる。だらりと脱力した体が、断続的にイっている。ぱちゅん、ぱちゅん、と突き上げられる度に音がして、その音が織の脳を侵してゆく。  数えてはいないが――きっと、イッた回数は、小さなものを含めれば100に近い。玉桂の妖術、そして人間ではありえない覚の歪な形の性器。それが、地獄のような快楽を織に与えていたのだ。 「あっ――んっ……はぅっ……」  1匹の覚が、また織の中に精液を吐き出した。もうお腹もぱんぱんで、苦しい。これ以上中に出されたら、辛い……そう感じて、織がゆるゆると首を振って次なる覚を拒絶する。涙に濡れた目で、覆いかぶさってきた覚を見上げて。  そうすると―― 「――私を拒むのか、織」 「……え、」  覚は、そんな織を見下ろして、話しかけてきた。  覚が言葉を理解し、そして話せると思っていなかった織は僅か驚く。ただ覚は口から言葉を発しているというよりは、脳内に直接言葉を注ぎ込んでくる……そんな語りかけ方をしてくるのだが。 「私を受け入れずして、誰を受け入れるというのだ。おまえを求める者なんて、いないというのに」 「……、」 「孤独で可哀想な織。愛され方を知らない織。私を受け入れろ、そうすれば楽になれるぞ」  ぐっと覚が顔を近づけてきて。そして、声を発することなく囁く。ぞわぞわと、心臓を撫でられるような感覚を覚えて、織はひゅ、と息を詰まらせた。 ――なんだ、この感覚は。 「おまえは……このままでは幸福になれない。人間の世界への未練を捨てなければいけない。だって、人間の世界に、おまえは不適合なのだから」 「……そ、れは」  覚の言葉。完全に否定できないのは――その言葉に、納得している自分がいるから。  妖怪に襲われることを恐れ、外に出ることを拒み。他人との接触を拒絶し、周囲の人々の優しさを跳ね除けた。自分ばかりが辛いのだと、そうやって自分を慰めて。大切な人たちを、傷つけてきた。  そんな、ほんの少し前の過去。それが、織を黙らせる。 「そうだ、思い出せ、織。おまえという人間を。おまえは……人間たちの間では幸せになれないのだ。おまえ自身が傷つけた彼らのもとで、再び暮らしたいなどと、図々しいことを願うな。自分の犯した罪を省みよ!」 「……でも、俺……昔よりも、家族と話せるようになって、……」 「それがどうした。まさか自分が変われたとでも思っているのか? ただ突然現れた竜神に惚れて、それだけで変わった気でいるのか? おまえは穢らわしい人間であるのに。ほら……現に、おまえは純情なふりをして、玉桂や私たちに腰を振っているじゃないか」 「……っ、……ひぁっ、……!」  ずぶんっ。覚の言葉に気を取られていた織の体が、ビクッ! と大きくのけぞる。覚が、巨大な肉棒を織の孔に突っ込んできたのだ。覚の言葉に反論したかったのに……織は、挿れられた瞬間に、イってしまった。イッてしまったから、反論できなかった。  妖怪に犯されて感じているなんて。なんて厭らしいのだろう。 「ぁっ……ぁ、ひっ……」 「おまえは、快楽に負けておまえを想ってくれた人間を裏切ったのさ!」 「ぁんっ、あっ、ひぁっ、やっ、やらっ、ごりごりっ、しない、れぇっ、……あぁっ……」 「鬼の肉棒は最高だろう? カカッ、もう普通の男に抱かれても物足りないぞ、おまえの淫らな体は!」 「ぁひっ、ぃくっ、……イクッ、いやっ、イクっ……!」  巨大で太い、そしてボコボコとした歪な覚のモノが、無慈悲に織を責め立てる。なかをゴリゴリと擦りあげられ、織は何度目かになる潮吹きをした。潮吹きをさせられすぎて力のなくなった織のものから、ちょろろろ……と切なげに、潮が溢れ出ている。  すさまじい快楽で真っ白になった織の頭に。黒い靄が浮かび上がってくる。イクたびに、それは広がっていって、やがて頭の中は黒に染められた。  鈴懸と出会う前の記憶。屋敷に閉じこもっていたあの頃の、荒んだ心。それが蘇ってきて、そして、自己嫌悪。吐き気を催す程に、自分を責め立てる言葉が心の中でぐるぐると廻っている。 「烏滸がましいにもほどがあるぞ、織! おまえが、竜神に抱かれたいと願うなど!」 「ひぅっ、あっ、ぁうっ、……すず、かけ、さまっ、……あぁっ、あひっ、」 「赦されない、おまえのような下賎な者が竜神に惚れるなど、赦されない!」 「あぁっ! すずかけ、さまっ……! すきになって、……ごめんなさいっ、……ごめんなさい……ぁっ、ああっ、ごめんなさい……! はうっ、あっ、あぁあっ、……!」  ズンッ!ズンッ! と激しく激しく突かれ、織の体ががくがくと揺さぶられる。織は泣きながら「ごめんなさい、」と謝罪を繰り返し、鈴懸と共に過ごした記憶に手を伸ばす。浮かんでは消える泡沫のような……もう夢に消えてしまうあの記憶に、織の心は涙を流した。  いたい。あの人への想いが、こんなにも苦しい。憎まれ口を叩き合ったり、優しく触れられたり、そんな小さな思い出たちが美しすぎて、触れたいのに触れられない。 「ほら、ナカに出すぞ! 好きなんだろう、この大きな男根が! よろこべ、織!」 「うぅっ、ひ、ぐ、……なか、だしてっ……もっと、穢してぇっ……あっ、ぁひっ、はぅっ……! おっきいの、だいすきっ、……あっ、あっ、ぁあー……!」  びゅるるっ、となかに大量の精液が注ぎ込まれた。しかし、もうぱんぱんでなかにはいらない織のお腹は、それを受け入れ切ることができず。孔から、注いだばかりの精液がどぴゅっどぴゅっと溢れ出てきた。 「ぁっ、……ぁ、ひ……」  勢い良く飛び出した後も。ぴゅ、ぴゅるる、と切なげにヒクつく織の孔から精液が溢れ出てくる。  排泄感にも似た感覚に、織は意識朦朧としながら恍惚と顔を蕩けさせた。人としての尊厳を奪われたようなその感覚が、織の自尊心と理性を完全に破壊してしまっていた。ぱんぱんになっていたお腹が苦しさから解放されて、その心地よさにとろんと蕩けてしまったのだ。 「カカカ……イチモツからも尻からも精を垂れ流すとは……淫らだなぁ、本当に淫らだ。こんな体では、もう人間たちのもとへは帰れないなぁ?」 「あ……あ……」 「ククッ、そら、また尻から精が飛び出てきたぞ。全部だすといい、まだまだ鬼たちはおまえに注ぎ足りないのだ」  織を拘束していた覚が、後ろから織の脚をぐいっと引っ張り上げた。大きく開脚させられ、股間を手前に突き出すような格好をさせられる。 「あぅっ……」  腹部を圧迫されるような格好のため、再びすさまじい排泄感が襲ってきた。織は冷や汗を流しながら、唇を噛みしめる。いくら精液とはいえ、こうしてたくさんの覚たちが見ている前で出すなど、これ以上したくなかった。  しかし。   「あっ、やっ、やめっ、」  乳首をきゅうっとつまみ上げられ、お尻のなかがぎゅっと締まる。さらにはお腹をぐっ、ぐっと押されて、なかに溜まっている精液が飛び出てきそうになった。  覚たちは愉しげに、織に精液をお尻から全て出すことを促しだす。絶対に出したくなくて、でも体をいじられて出そうになって……織はぼろぼろと涙を流しながら下半身をもじもじとさせた。 「ひっ、いやっ、いやっ、でちゃっ……でちゃうっ、……いや……」  織ははーはーと浅く息をして、耐える。覚たちはそんな織を弄ぶように、体を触る手に緩急をつける。優しく触ってやれば織が安心したようにほっと息をつき、そして織が気を抜いたその瞬間にぐっと強く刺激する。ビクンッ、と体を弓反りにさせて、慌てたように下腹部に力を込めて精液が出てくるのに耐える織は、すっかり覚たちのおもちゃになっていた。 「あっ、あっ、あっ、」  お腹を圧迫していた手が、ぐっと前立腺のあたりを刺激してくる。ごりっ、ごりっ、と強く刺激されて……織の体はまた感じ始めてしまう。ヒクヒクッ、と疼き始めたなかは、もう、我慢なんてできなくて。  きゅうううーっ、とお尻の孔が窄まる。そして、ひくひくっ、ひくひくっ、と細かく痙攣した。じゅわーっとでぐちのあたりが熱くなってきて、織は暴れるようにして覚の手を払おうとする。  しかし―― 「いやっ……いやっ! でちゃうっ、やっ、でちゃ、……やっ、やっ、やぁー……!」  びゅるるるっ、と織の孔は、詰め込まれた精液を噴射してしまった。そして同時に、前立腺を刺激されまくっていた結果だろう、潮吹きまでしてしまう。 「いや……いや……あっ、……あ、あぁ……」 「クク、尻から精液を出しながら感じてるのか、織。卑しい体よ」 「ん……ぁ、……」  ぴゅるる、と最後まで、搾り取られるようにして精液がでてくる。  二回も出してしまった織は、言いようのない絶望に見舞われて、騒ぐ気力もなくなってしまった。また別の覚が覆いかぶさってきたが、ぼんやりとされるがままになっていた。 「ぁ、……ん……」  全部、出して。空っぽになった孔に、また次の覚が大きなモノを挿れてくる。  ほんとうに、もう。(にくたい)は穢れに穢れてしまった。あの綺麗な人に、今でも焦がれてしまうけれど。あの人に、この体に触れさせるわけにはいかない。穢い……器だけじゃない、中身(たましい)も、穢い。 「あっ、ぁんっ、あっ、きもちいいっ、あっ、」  きっと、妖怪に襲われる体であったのも、不幸だったのではなく必然だったのかもしれない。この魂は、孤独であるべきだったのだ。誰からも愛されてはいけない、愛してはいけない。  穢い、俺は、穢い。  覚たちに犯され、よがりながら。織は、ひたすらに自分へ呪いの言葉を吐き捨てていた。

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