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第3話

陸海空、どんな状況下においてもゼロにとっては大した問題ではない。目的地には1日あればたどり着けた。 昔から人間に読まれている物語では、多くの仲間たちが長い時間をかけ、目的に向かって冒険を続ける。そう考えると、世界はとても狭い。植物が死に絶えた砂漠の砂を踏みしめながら、ゼロはそう思考した。 周囲に生命反応はない。容赦ない熱を太陽が放ちながら、ここへ何かが訪れるのを拒絶している。 ゼロがラボを経ってからずっと後をつけてくる小型の無人航空機には最初から気づいていたが、あの座標の場所を知られてはいけないと命じられていたわけでもないゼロは特になにもしなかった。周囲にその姿はないが、おそらく、見えないところから待機しているのだろう。 ふと、音がした。無意識にそちらを向き、そして感知する。人型の何かが近づいてくる。 「やっぱり、ゼロだ」 それは口を聞いた。身長はゼロより20センチ以上高く、茶髪の垢抜けた青年、の姿をした何かだった。生命反応がないということは人間ではない。 彼はその右手に、1メートルほどの飛行機型の機械を持っていた。それがゼロを追跡していた無人航空機だということにすぐ気付く。 「少し前から見てたんだけど、こいつずっと君のこと追いかけ回してたよ。よく分かんないけど壊しといた」 笑うと、白い歯が見えた。とても精巧な造りだ。肌や髪、そのどれもが人間のそれと差がない。 「俺はノア。きみと同じ人型ロボット。よろしく」 「……なるほど、ボディ部に人間の肉体そのものを使ったんですね」 「へえ、見ただけでわかるんだ?そう。でも違う。これは元々の俺の体で、機械化したんだ。つまりサイボーグ、みたいな」 実に興味深かった。現れた青年は、元は普通の人間だったもの。明らかに自分とは違うのに、同じ機械だ。 「それで、ぼくを追えと命じられてきたんですか」 「いや。俺に主人はいないよ。きみと同じで。そもそも俺、こんな体だけど一応人間だから人権もあるんだよね。ここに来たのは単なるキョーミ。きみが俺の上を飛んでったもんだから、ビックリして」 ゼロはノアを凝視する。笑い方も仕草も話し方も、人間そのものだった。自分とは明らかに違っている。 「……これ、壊したらまずかった?なにかの調査とか?」 沈黙に耐えきれず、ノアが口を開く。後ろめたそうにもう動かなくなった鉄くずをゼロに差し出す。 「いえ。ぼくはなんとも。それで、あなたはこの辺りに住んでいるのですか?この辺りで、なんでも願いが叶うなどの言い伝えなど、聞いたことありませんか?」 「え?う、うーん、そんな胡散臭い話は聞いたことないし…そもそも俺、色んな場所を行ったり来たりしてるからこの辺には詳しくないかな」 淡々と質問してくるゼロに戸惑いつつも、不必要とわかったノアは鉄くずを地面に投げ捨てた。同じような存在ということが大きいのかは分からないが、ノアがゼロを臆している様子はない。それはゼロにとって非常に新鮮な経験だった。 「で、最強兵器のきみがそれを探しに来たと?誰かに命令されたの?」 「いえ。お父さまが残したメッセージにそのような場所がこの辺りにあるとあったので」 「お父さまって…あのカムラ?そう言われるとなんか本当ぽいな」 言いながら、ノアはまた、白い歯を見せて少年のように笑う。 「じゃあ、俺も探すの手伝っていい?」 「はい、どうぞ」 断る理由はゼロにはなかった。そもそも、何もかもが不確かな情報だ。あるかどうかも分からない、奪われるという危険もない。誰かがこの旅路に参加しようがしまいが、ゼロにとってはなんの支障もない。 こうして、旅の仲間はふたりになった。

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