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第15話

「…失礼致します。」 蒼斗が部屋に入ると後ろに控えていた佐久間がドアを閉め、蒼斗と博光とその秘書の三人になった。 「まぁ、座りなさい。久しぶりだな、蒼斗。大学はどうなんだ?Ωの男と同棲していると聞いたが。」 博光は目を通していた書類を置いて、蒼斗に着席を促した。 やはり晴人の事か。 「そうですね、学業は順調です。交際に関しては貴方には関係のない事です。大した用がないなら、俺はこれで失礼致します。」 きっぱりと言い捨て、立ち上がる。 踵を返して、ドアノブに手を掛けたところで声をかけられた。 「お前には、令嬢と婚約してもらう手筈になっている。来週もう一度来い。」 返事はせずに、部屋を後にした。 「…はぁ。」 思わずため息を吐くと、隣に立つ佐久間がふっと笑った。 「ご自宅までお送りしますよ。」 そこから蒼斗のマンションまで、佐久間との会話は何も無いままエントランス前で別れた。

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