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第98話

その時だった。 「おい!」と背後から声がした。「何をしている?!」 枯葉を踏みしめる音。別なライト。 一瞬だった。 男は驚き、わずかに身じろいだ。広瀬は、男の性器を思いっきり噛んだ。そして、悲鳴をあげた男に体当たりをし、手から銃を奪った。 男は、うずくまり、前をおさえている。相当強く噛んだから、動けないはずだ。 「ちくしょう」とわめいた。「急になんだ」 広瀬は、銃を男に向けたまま、背後からきたライトのほうをちらっと見た。 「やけに探すのに時間がかかっていると思ったら、なにをしていたんだ」とライトの方から声がする。低い声だ。 「バカ野郎。そいつに銃をとられた」男は、苦しそうだが、ゆっくりと立ち上がろうとしている。 仲間だったのか、と広瀬は思った。二対一とは。だけど、まだ、こちらには銃がある。 広瀬は、後ずさりして、できるだけ男とは距離をとった。狙いはつけたままだ。 「お前」とライトの男は呆れ声だ。「すぐに連れてこいと言ったはずだろう」 「こいつが抵抗してきたんだ」 「だからってなあ」と返事があった。そして、ライトの男は一歩こちらに踏み出した。 「動くな」と広瀬は言った。だが、相手は動いてくる。ためらわず銃の引き金を引いた。 大きな破裂音が響いた。 「おっと」とライトの男は言い足をとめた。「ほらみろ。こんなことになったじゃないか」 くそ、っと広瀬を犯そうとした男が呻く。「かすったぞ」 「次は当てる」と広瀬は言った。「お前たち、何者だ?」 ライトの男は答えない。その手にもセミオートマチックがあった。そして、聞いてきた。「お前たちが見つけたものをどこに隠している?」 「何のことだ?」 「あちこち探っているだろう。お前の父親が、お前に残したものだ」 ライトが顔に直接当たる。「こうしてみると、お前は、父親にそっくりだな。あの時の子どもが、ずいぶんと大きくなったもんだ」とライトの男は言った。 「おい。つまんねえこと言ってないで、そいつの足でも撃って動けなくして、連れていこうぜ」と広瀬を犯そうとした方の男が言った。 「そうだな」とライトの男は答える。「手っ取り早くするか」彼のセミオートマチックの銃口があがる。 広瀬は、銃を構えたまま動かなかった。撃たれそうになったら、撃ち返すだけだ。

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