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第101話
男たちは、この山道はカーブが急で道も細いから気をつけろと忠告し、去っていった。
広瀬も車に乗った。早く、この場を離れなければと思った。バックミラーをよくみて、あの黒い車がついてこないかずっと警戒し続けた。
山道を抜けてしばらくいくと、田畑があり、民家が増えてくる。街灯がある場所になってきた。うっすらとだが空が早朝の明るさになってきている。たまに、軽トラックなどとすれ違うようになった。
もう、少し行くと、小さなコンビニが明るく周囲を照らしているのがみえた。
店員が店の前を掃除している。
急に、涙があふれだし、止められなくなった。視界がかすむ。
広瀬は、路肩に車をとめた。
ドアをあけて、外に出た。
我慢できずその場で吐いた。吐くものがなくなっても、えづくだけになっても、身体を震わせて。口の中、胃の中すべてを出してしまいたかった。
そのまま涙も出続け、やがて嗚咽に変わった。
あの男、自分の口を犯し、身体中をまさぐった。まだ、震えがとまらない。
しばらく、車の脇にしゃがみこみじっとした。
何者だったのだろうか。
ぜったいに、許さない。
必ず、見つけ出してやる。殺意がわいてくる。
何を欲しがっていたのだろうか。父が自分に残したこととか言っていた。会った記憶はない。でも、自分を知っているような口ぶりだ。
必ず、つきつめてやる。そして、報いをうけさせてやる。
シャツの袖で、顔をぬぐった。身体をおこすと背中に奪った銃があたった。広瀬はそれを手に持ち、じっとみた。
そして、車に戻ると銃をダッシュボードにいれ、再び車を出した。
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