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第102話
家につくころにはすっかり明るくなっていた。広瀬は、車を慎重に駐車場に停めた。ダッシュボードから銃をとりだし、車を降りた。
後ろに回り、かがみこんで、タイヤのパンクの跡をみると、小さな穴が開いている。なにかを踏んでしまったようにも思える。気づかないうちにタイヤを撃ち抜かれていたのかもしれないとも思う。
視界が揺れる。足元がふらついた。家に入ると後ろ手で鍵をかけた。
まっすぐ、二階の自分の部屋に入る。デスクの引き出しを引く。鍵はかかったままだ。ほっとしてポケットから鍵を出し、中を確かめた。
デバイスとメモリーカードの入った封筒は、まだあった。そこに、今度は男から奪ったセミオートマチックをいれる。もう一度、引き出しの鍵をかけた。
部屋を出ようとして、ふと、部屋のドアにも鍵をかけようと思った。誰かが勝手に入ることはないがこの部屋には銃があるのだ。鍵をかけておく方が安心だった。
それから、一階に戻り、浴室に入って服を脱いだ。
脱衣場の鏡には全身がうつる。
全裸になって自分を見ると、左肩から腕にかけて、青黒く内出血し、腫れていた。思うように動かすことはできない。これは、病院に行かなければならないレベルだな、と広瀬は思った。
擦過傷は無数にあり、蹴られたあとだろう胸や腹も内出血している。鏡を見ると、右耳のあたりは切れた血が固まっていた。スーツもシャツも、泥や枯葉でどろどろになっている。
暗い道ではここまでひどいとは思わなかった。ネクタイは、外されたままでどこかにいってしまった。
東城が、家にいないのは幸いだった。こんな様子の広瀬を見たら、どんな行動に出るだろう。よくわからないが、大騒ぎすることだけは間違いない。
痛みをこらえてシャワーを浴び、着替えた。シャツにそでを通すことがなかなかできなかった。
そこまでがんばったが、キッチンに行こうとして、頭がくらくらし、倒れそうになった。
やっぱりさっきのは嘘だ。東城が家にいてくれればよかった。
広瀬が怪我をしていたら、大騒ぎしながらも、助けてくれただろう。怪我を確認し、すぐに病院を手配するだろう。そして、優しく抱いて、身体の怪我以外、どこか傷ついていないかを心配してくれていたはずだ。広瀬をいたわり甘やかして、何も考えなくていいように温めてくれただろう。
広瀬は、痛みと疲労で、キッチンに入る途中の廊下でうずくまってしまった。
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