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第111話

「近藤理事と思われる遺体が見つかった」 「え」広瀬の灰色の目に感情が現れる。驚きで広がった。「でも」 「まだ、確定はしていないからニュースにはなっていない」 「確定していないというのは」 「遺体の損傷が激しいんだ。腐敗だけじゃなくて、山の中に放置されていたせいだが、野生動物が食べたりしたせいで、かなり毀損している。今のところ、衣類から、近藤理事ではないかと推定されているところだ。死後数日はたっているらしい。検死が行われているからいずれ詳細の報告がでる。新宿で行方が途絶えてから、それほどたたずに亡くなったと思う」 広瀬は、首を横に振った。「そんな。死因はなんですか?」 「それもまだわからない」と東城は言った。「自殺か事故の可能性もある。それで、俺は今日は帰ることになった。自殺か事故なら今の捜査本部は解散する。もし、殺人だったら、別に捜査本部がたてられるだろう。そこに俺が呼ばれるかどうかは不明だ。この件はまだ極秘だが、お前に伝えないと、と思ったんだ」 「詳細がわかれば公開されるんですか?」 「さあな」 広瀬は眼を閉じた。 近藤理事は彼にとっては大事な「オジサンたち」の一人だ。父親の親友で、学生のころから気にかけてくれていたのだ。 行方不明になったのを広瀬なりに探していたのはこんな結果になって欲しくなかったからだ。

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