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第119話

次の日の朝目が覚めると、身体は昨日よりはましになっていた。 東城は先に起きていて、いつもならジョギングに行っている時間なのに今朝は広瀬のために朝食を準備してくれていた。 広瀬の身支度も手伝ってくれた。 彼の手が優しくもどかしげに自分に触れた。 ネクタイも結んでくれる。人のをしめるのは難しいと言って背後に回り、前に手を回した。白いワイシャツを着た彼の両腕が肩にある。 後ろから抱きしめられているようだ。かすかにフレグランスの香りが鼻腔から入り込み頭の中を安心させていく。よく知っている彼の香りだ。 広瀬の目の前で東城の指が動く。大きな手の長い指。くるくると動きネクタイを結んでいく。最後に首をキュッとしめると、うなじにキスをしてきた。 出がけに、今度は唇を合わせてきた。舌で唇をなぞられた。自分の目を覗き込んでくる彼の目を見返した。 「道草せずに真っすぐ帰っておいで。運河と山道には重々気をつけて」冗談のように言っていたが心配しているのはよくわかっていた。

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