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第133話
指定された場所は、忍沼の家のある駅だった。
改札で待っていると、忍沼がやってきた。後ろには、元村融もいる。忍沼が相変わらず笑顔なのと同じように、元村はいつも通りの機嫌の悪い顔をしていた。
「こんばんは」と忍沼は言った。広瀬も挨拶を返す。元村は無言だ。
「こっちだよ」と忍沼は言った。
歩いていく先は、忍沼の家の方向ではなかった。そこは駅前の駐車場で、一台の黒いワンボックスカーの前まできた。
「乗って」
わからず広瀬は忍沼の顔を見る。この車は何だろう。誰の車で、どこに行くのだろう。
元村が運転席側のドアを開け乗る。彼の車なのだろうか。
忍沼が後部座席のドアを広瀬のために開けてくれた。広瀬が乗りこむとドアを閉めてくれる。
忍沼は助手席に座る。
「どこに行くんですか?」広瀬は聞いた。
「僕たちのラボ」と忍沼は答え、元村に車を出すよう言った。
車は夜の街を走る。元村はじっと前を向き、安全運転だ。
忍沼は広瀬に夕飯は食べたのかとか、今日は忙しかったのかとか質問してくる。怪我のことも聞かれた。
広瀬は質問に答えるのに忙しく、彼に質問することができなかった。ラボとは何か、どこにあるのか。
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