136 / 193
第136話
「岩下が死ぬ何日か前の会話だ。だけど、岩下の家で探したけどなかった。お前、どうやってこのメモリーカード手に入れたんだ?」と元村が聞いてくる。
「あきちゃん、言いたくないならいいんだよ」と忍沼が遮る。
「なんで言いたくないんだよ」と元村は言い捨てる。「俺たちを信用してないからなんだろ」
「そんなことないよね」と広瀬の意思は関係なく忍沼にとりなされる。
「送られてきたんです」と広瀬は答えた。「郵送されてきました。送り主はわかりません」
忍沼は身体を乗り出して来る。「あきちゃん宛にだったの?」
「そうです」
「岩下がお前に送ってきたのか?」
「そうかもしれません」
「まさか、お前、デバイスももってるんじゃないだろうな?」と元村に聞かれた。
広瀬は正直にうなずいた。「家にあります」
忍沼は目を見開いている。「あきちゃん、それは本当?」
「はい。このメモリーカードと送られてきました」
「どうして、あきちゃんのところに?」
広瀬は首を横に振る。
わからないのだ。岩下が自分に送ってきたのだろうか。でも、何のためにだろうか。
「設計図とデバイス、どうするつもりだ?」
どうすべきか、まだ、わからない。
「自殺する前に、岩下があきちゃんに送ったんだろうか。あきちゃんに何かを伝えたかったんだろうか」
「岩下教授は、本当に自殺だったんですか?」
「そうだよ」と忍沼は言った。「音声でわかるよ。誰かに殺されたんじゃない。一人きりで、自分で、薬を飲んで死んだんだ」
ともだちにシェアしよう!