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第148話

ベッドで落ち着いてしまう前に、まず風呂に入った。 脱衣所で服を脱ぐと、東城が広瀬の身体を点検するように眺めている。 「痣の色が変わったな」と彼は左の肩を指さす。青黒かった色が黄みがかった肌の色に変わり始めているのだ。 「動いても痛みはないです」 「押したら痛いだろ」 「そうですね」 「舐めたら?」 「試してみますか?」広瀬はそう言いながら浴室に入った。 広い浴室からは庭や空が見える。 ぼうっとライトで照らされる夜の中庭の木々は、秋の色だ。 枯葉がきれいに掃かれて庭の隅に積みあがっている。 あの枯葉はどうなるんだろう。 東城はこの庭を大事にしていて、時間があるときには水をやったり雑草を抜いたりしている。 時々植木屋に依頼して手入れしてもらっているので、いつも整っている。 広瀬も休みの日が天気が良いと、縁側に座布団を出しぼんやり眺める。木も風も土の匂いも、居心地のいい庭だ。 広瀬はなみなみとお湯が貼られた広いバスタブに肩までつかった。手足を伸ばす。 「湯加減は?」と東城が聞いてきた。 「丁度いいです」と広瀬は答えた。 「そうか」そういいながらバスタブに屈みこみキスしてきた。 彼は、氷を張ったワインクーラーにいれたスパークリングワインとフルートグラスを2つもってきていた。さらに果物を盛ったボウルも。 広瀬は上半身をバスタブから出し、グラスを受け取った。 東城もバスタブに入ってきて、自分と広瀬のグラスに薄いゴールドのスパークリングワインが注がれる。 泡が一直線にきれいにたった。軽くグラスをあわせるとかすかにいい音がした。冷たい液体が喉に心地よい。 東城がボウルから無花果をつまみあげる。ぽってりとして重そうな無花果。少し割れていてよく熟している。

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