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第153話
東城は竜崎と、東京郊外の住宅地を訪ねていた。行きついた先は、一戸建てが立ち並ぶ、同じタイプの住宅の一軒だった。
ドアフォンを鳴らすと、20代半ばといったところの女性がでてきた。白いブラウスにジーンズといういで立ちで、化粧っけはあまりない。
彼女は東城の顔をみて、軽い笑顔を浮かべた。それから、竜崎にも会釈して挨拶をする。
東城は、身分証を示した。
「笹島です」と彼女は名乗った。
竜崎も頭を下げた。「竜崎です」
「どうぞ」と彼女は二人を家にあげた。
家の中はきちんと片付いていた。三和土の靴や傘は彼女のものだ。彼女以外の人間はこの家には住んでいなさそうだ。
短い廊下の先に小さな居間がある。彼女は二人に椅子をすすめた。
山梨に設置された近藤の事件の捜査本部に行ったついでに、東城は竜崎と『ちきゅうぎのびーのご』の場所と思われる、喫茶店があった場所にもう一度行った。
そこは今はなにもなかった。
近所の人に聞くと土地の所有者はここ20年で何人も変わっているということだった。
だが、20年以上前には喫茶店があり、そこは火事で焼失したということを教えてもらった。
登記簿や当時の新聞記事をもとに、喫茶店のオーナーの氏名と現在の所在を探したのだ。
喫茶店のオーナーは既に故人となっていた。
探していくうちにオーナーの娘と連絡がとれた。
警察と名乗り、喫茶店のことを質問したら、逆に「広瀬さんの知り合いですか?」と聞かれたのだ。
何のことかはわからなかったが、知り合いだと答えた。
「そうですか」と彼女は言った。
それから、あっさりと会ってもよい、ついてはどこどこに来てほしい、と指示されたのだ。誰かが自分に会いに来るのを待っていて、問い合わせがあったら誤らずに回答できるよう何度も練習したかのような口ぶりだった。
近藤の事件とどのようなつながりがあるのかは分からなかったが、東城は福岡に報告をし、竜崎と共に、喫茶店のオーナーの娘に会いに来たのだ。
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