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第159話
「この笹島氏の日記からは、広瀬信隆氏が亡くなった後、ファイルを求めて男がきたという記述があります。近藤ではない男です。何者かはわかりませんが、その男を追い返した数日後、ファイルを預かった広瀬信隆氏の友人の喫茶店は放火で全焼しています」
「実行部隊が別にいるのか。広瀬信隆の殺人事件も、近藤一人で殺すことはできなかっただろう。あの事件の資料は、今、どこにある?」
「山梨県警です。この前、他の資料と一緒に捜査本部にもっていきました」と東城は答えた。
「もう一度、全体を確認すると、つながりがわかるかもしれんな」と福岡は言う。
「山梨県警に行って資料をかきまわすわけにはいきませんが」と竜崎はまだ渋い顔をしている。
「そうツンケンいうなよ、竜崎。すぐに行けとは言ってない。まずは、せっかく手に入れた資料の整理分析を十分にしろ」
「他所で、この話をされるのですか?」
福岡は苦笑いをする。「俺もそうそう何度も左遷されたくないからな。北海道は飯はうまくて美人も多いから、また行ってもいいが、俺がいなきゃ本庁も仕事が溜まって困るだろう。それに、切り札は手元にとっておくものだ」
そう言いながら、広瀬信隆のファイルで名指しされている人間の名前をしげしげと眺めていた。
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