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第171話

三階に上ってきた階段を使い、二階に降りた。音が聞こえてくる。何人かいるようだ。声と音。 広瀬は二階のフロアに入るドアのところで身体をかがめ、ドアの隙間から中をうかがった。 3人の男がいる。 二階に置いてある簡易なベッドや机、椅子を動かして何かを探している者。壁に並ぶパソコンやディスプレイ、サーバーを操作している者がいる。 「動かない」という声がした。 「電源は?」 「電気はきてるし、電源は入る。だけど、起動しない」 「どういうことだ?」 「認証が必要なんじゃないのか?」と声が続く。 広瀬は、耳をすませた。あの山の中で聞いた声だ。 広瀬に乱暴を働いた男と、後から来た男。 その声は確かに聞き覚えがあった。 山の中の声であり、子どものころ聞いた声でもある。 「認証もなにも、その手前が動かない」ともう一人知らない声がした。「これは時間がかかる」 「全部運びだすか?」 「そうだな。だが、別な車を持ってくる必要があるぞ」 男たちは、二階での操作を諦めたようだった。 そして、エレベータに向かっている。 広瀬は、ドアの隙間から彼らを見ることができた。 一瞬だったがそれで十分だ。忍沼がスティンガーセキュリティの人間といっていた写真の男だ。堀口と竹内だ。 堀口は、子どものころのあの声の主だった。

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