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第172話
やっと確信が得られた。この男が、広瀬の両親を殺したのだ。
広瀬は、腰の銃にもう一度触れた。
ここで、あいつを撃つことは可能だろうか。
弾は三発ある。三人とも撃つことはできるだろうか。
そう考えている間に、三人はエレベーターに乗り、上に上がっていった。
心臓が早く打っている。やっとみつけた。あの男。
広瀬の両親を殺し、今は忍沼を傷つけた。
頭の中で何度かシミュレーションしてみる。この階段を上り、三階に行き、銃を抜いて撃つ。
警戒していない今なら、撃てるだろう。
そうすれば、復讐をとげることができる。
気が付いたら、息を止めていた。努力して深呼吸をしてみる。何度か、息をした方がいいのはわかっていた。
だが、また息がとまる。
ここで、うまくやり遂げられるだろうか。
だが、ふいにエレベーターは動き、そのまま一階に降りていってしまったのだ。
広瀬は階段を降りた。
階段から一階のエントランスに降りた時には、そこには人影はなかった。
外に停まっていた車が動く音がした。
見ると、三人が乗ってきただろう車が行ってしまった後だった。
広瀬は、唇を噛んだ。
あそこで躊躇してはいけなかったのだ。どうしてすぐに上がり、撃たなかったのか。千載一遇のチャンスだったのに。
いや、だけど、彼らは戻ってくるだろう。ここの機器を運び出すと言っていた。
待っていたら、戻ってくる可能性はある。
やるならその時だ。
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