172 / 193

第172話

やっと確信が得られた。この男が、広瀬の両親を殺したのだ。 広瀬は、腰の銃にもう一度触れた。 ここで、あいつを撃つことは可能だろうか。 弾は三発ある。三人とも撃つことはできるだろうか。 そう考えている間に、三人はエレベーターに乗り、上に上がっていった。 心臓が早く打っている。やっとみつけた。あの男。 広瀬の両親を殺し、今は忍沼を傷つけた。 頭の中で何度かシミュレーションしてみる。この階段を上り、三階に行き、銃を抜いて撃つ。 警戒していない今なら、撃てるだろう。 そうすれば、復讐をとげることができる。 気が付いたら、息を止めていた。努力して深呼吸をしてみる。何度か、息をした方がいいのはわかっていた。 だが、また息がとまる。 ここで、うまくやり遂げられるだろうか。 だが、ふいにエレベーターは動き、そのまま一階に降りていってしまったのだ。 広瀬は階段を降りた。 階段から一階のエントランスに降りた時には、そこには人影はなかった。 外に停まっていた車が動く音がした。 見ると、三人が乗ってきただろう車が行ってしまった後だった。 広瀬は、唇を噛んだ。 あそこで躊躇してはいけなかったのだ。どうしてすぐに上がり、撃たなかったのか。千載一遇のチャンスだったのに。 いや、だけど、彼らは戻ってくるだろう。ここの機器を運び出すと言っていた。 待っていたら、戻ってくる可能性はある。 やるならその時だ。

ともだちにシェアしよう!