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第175話
福岡のデスクから離れた後、竜崎が怪訝そうな表情をして自分を見ている。
「どうかしたのか?」彼は察しがいいのだ。
「それが」言おうかどうしようか、迷ったが、結局は言った。「広瀬が、無断欠勤しているらしい」と東城は竜崎に告げた。「俺はあいつの番人じゃないから、どうしてるかなんて知らないんだが、ちょくちょく無茶をする奴だから」そこで、ふと思った。「もし、なにかのつてで、山梨が堀口を探しているということが耳に入ったら、勝手に動いているかもしれない」
近藤理事は、広瀬と親しい人間だ。広瀬は犯人を捜したがっていた。
「山梨県警から広瀬に情報が入るのか?」
「いや、そんな人脈が築けるようなタイプじゃないから」そう言いながら、頭が痛くなってくる。「だが、情報源はいる」忍沼拓実だ。彼なら、何か知っていて、広瀬に吹き込んだ可能性がある。
「それにしても、無断欠勤と言うのは不思議だ」と竜崎は言った。「彼は、無断でなにかしていても、自分の都合で欠勤するというのはないだろう。仮に堀口という男を追っているというのは、ありうるとして、福岡さんが言っていたように、堀口は殺人を犯している、危険人物だ。連絡が途絶えているというのは、悪い兆候だ。広瀬が堀口を追っているのならいいが」
「堀口が、広瀬を捉えているってことか?」
竜崎はうなずいた。「近藤理事と堀口が、裏金でつながっているとすると、その話を暴こうとした広瀬信隆の息子の広瀬彰也に、堀口が接触してもおかしくない。なにが起こっているかはまだわからないが、今は、広瀬を探した方がよさそうだ」と彼は言った。「空振りかもしれないが、堀口への近道になるかもしれない」
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