182 / 193
第182話
GPSが示した先は、県境にある河川敷付近の空き地で、倉庫のような建物があった。
元村は建物から少し離れたところに車を停めた。
既に辺りは暗くなっている。倉庫の全貌を外観からつかむことはできそうになかった。
「お前は、外を回って裏手から入れないか見ろ」と元村に指示された。
彼は身体を低くして、倉庫の扉の付近に近づいていく。
広瀬は、元村の背中を見てから、彼の指示通り倉庫の後ろにむかった。腰の後ろにさした銃を手に取る。
倉庫には窓はなく中がどうなっているかわからない。回り込むと裏手にも小さなドアはあった。だが、鍵がかかっている。
広瀬が、カギを壊そうドアを揺さぶった。ガチャっと音がしてあっさりと開いた。
ドアを開けるとすぐ中に、若い男が立っていた。
広瀬を見て口を開ける。広瀬は、銃を突きつけ、男に声を出さないよう示した。
男の横には忍沼のラボから運んだサーバーが並んでいる。広瀬は、若い男に手で床に伏せるよう指示した。そして、男が持っていたケーブルを使い後ろ手をしばりあげた。
「静かにしていろ」と広瀬は男に告げた。
奥へ入ろうとすると、向こうから大声が上がった。元村が襲撃を開始したのだろう。
走って奥に進むと、元村が、大柄な男ともみ合いになっていた。
床にはすでに一人が倒れている。
元村と争っている大男は山の中で広瀬を襲った竹内だ。
彼の方が体格上は優位だが、元村はナイフを使い、竹内の腿を切り裂いた。
無駄もためらいもない動作だった。
悲鳴が上がる。
竹内は、暴れながら元村の顔をつかみ、床に叩きつけた。
頭が床にあたるゴツンと鈍い音がした。
頭から血が流しながらかまわず元村は、ナイフを使い、竹内の腹を下から刺した。
ナイフは、身体にのめりこみ、抜けないようだ。
ともだちにシェアしよう!