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第6話

10時頃には、身支度をして外出した。石田さんにはまだ掃除や片付けがあるので、よろしく頼んでおく。駐車場から東城の車を出した。 広瀬は、スマホをとりだして、メールをチェックしている。両親がなくなった後、広瀬を引き取り育ててくれた伯父夫婦からの連絡を再度見ているのだ。二人とは墓地の近くの駅で待ち合わせをしている。 広瀬が休みをとって墓参りに行くときいたのは先月のことだった。毎年そうしているのだ、と。 伯父夫婦は遠方にいるので、こられるときとそうでないときがある。 東城は、自分も行きたいと広瀬にねだったのだ。広瀬は、最初、ただのお墓があるだけですよ、と、行きたがる東城を不思議がった。自分だって、習慣だからいくけど、それ以上はなにもない、と。 だが、くいさがる東城に折れて、一緒に連れて行ってくれることになったのだ。 そうしたら、今年に限って、伯父夫婦も来ることになったらしい。 東城は、広瀬が、伯父夫婦がくるから、自分にはこないで欲しいというだろうと思った。広瀬は、そうは言わなかった。自分のことを何と言って伯父夫婦に説明したのか東城は知らなかった。 それから、広瀬は誰かに電話をかけ、しばらく話してから電話を切った。 「誰だ?」と聞いた。 「昨日の夜、電話くれた人です。親戚の叔母です」と広瀬が答える。「両親の命日の前には必ず電話をくれるんです。いつも俺のこと気にかけてくれていて」 「そうだったんだ。急用って電話きらせて、悪かったな」と東城はいった。 「いいです。話長いんで」と広瀬はこたえた。「それに、ほんとは悪いとはおもってないでしょう」 東城は、「まあ、正直、あの状態で、放っておかれた俺の方がかわいそうだろ」と答えた。

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