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第7話
広瀬の両親の墓地は、郊外の霊園の中にある。最寄り駅の近くで待っていると、伯父夫婦がやってきた。
探しているのだろうあたりに目を配っていたが、広瀬に気づくと、ほっと安心した顔をした。
伯父は広瀬よりやや背が低く、髪に白いものが混じっていた。きちんとスーツを着ている。伯母は痩せていて姿勢がよい。
確か、伯母さんは小学校の先生だったはずだ。ちょっとでもふざけたことをしたら怒られそうだな、しないけど、と東城は思った。
伯父が前日、神奈川県で出張があり、二人で関東に来ていたらしいのだ。手には小ぶりな旅行鞄を持っている。伯母の方はショルダーバッグに手提げ袋だ。
東城は、二人に頭を下げて名前を名乗り、停めていた車に案内した。伯父夫婦も挨拶をし、車に乗り込んだ。
「彰也、元気そうね。よかった。仕事は順調?」と伯母が広瀬に聞いていた。
「うん」広瀬はうなずきながら答える。こういう雰囲気の広瀬は東城には新鮮だった。
うれしそうな、ちょっと気恥ずかしそうな感じだ。きちんと表情がある普通の人間のように見える。育ての親なのだから当然だろうが、親しい人にしかみせない、表情だ。
「あんまり危ないことしちゃだめよ」と伯母はいう。
「危ないのが彰也の仕事なんだぞ」と伯父が横から口をはさむ。「警察の仕事っていうのは、そういうものだ」
車の中は、伯父夫婦の方言の混じったはずんだ声の会話と、広瀬の返事が続いていく。仲がいいんだな、と東城は思った。
広瀬は、伯父夫婦は自分によくしてくれた、と何度も言っていた。
両親が突然殺されたとき、広瀬はまだ小学1年だった。親戚の中で誰が面倒をみるのかということになり、子供がいなかった伯父夫婦がぜひうちに、といってひきとったのだ。
伯父は広瀬の母親の兄にあたる人だ。
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