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第8話

二人は自分を、何不自由なく育ててくれた、と広瀬はいっていた。本当の親と同じように、いやそれ以上に自分を愛し、可愛がってくれた。 広瀬が東京の大学に進学することになったとき、人とのコミュニケーションにやや難がある彼が1人で東京に暮らすことをとても心配していた。 関東には父方の親戚たちがいて自分たちが広瀬の面倒をみるから大丈夫と何度も言われ、やっと送り出したのだ。そして、その言葉通り関東の親戚たちはうるさいくらいに広瀬の生活に関わってきた。 なんでも希望をかなえてくれて親切だった伯父夫婦や親戚たちだったが、警察官になりたいといったときだけは猛反対したらしい。 そこまで反対されると思っていなかった広瀬はそのときはじめて、彼らがどんな思いで両親の死とその後を過ごしてきたのかを知った。 「警察は、何もしてくれない。犯人も捕まえられない。それどころか、こちらを犯人あつかいし、調べるだけ調べて、かきまわすだけかきまわしただけだった」というのが全員の反対理由だった。 遺品は今でも全部がもどってきたわけではなかった。いや、どんな遺品があったのかさえあかされないものもあるらしい。 親族にしてみたら、突然、自分の子供を、妹を、兄を殺されただけでもつらかっただろうが、それ以上に、警察のありかたやゆがんだ情報提供によって、傷つけられたのだ。 警察にはもうかかわりたくない、というのが伯父夫婦や親戚の共通見解だった。 だが、最後には、広瀬の意思を尊重してくれた。彰也の気持ちもわかる、とさえ言ってくれたのだ。 警察だって、いつか、もしかしたら、犯人を捕まえることだって、できるかもしれない、と。

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