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第15話

そんなことを考えていると広瀬が聞いてきた。「この写真の場所、どこだと思いますか?旅行に行ったのは覚えてるんですけど、どこかはわからなくって」 「この山、多分、富士山だろうな。山梨のほうじゃないか?」と東城は言った。 「ああ、そうだったんですね。これ、3人で遊覧船に乗った後の写真です。父は仕事が忙しかったから、3人で旅行ってこの一回くらいだったんです。場所はどこかは知らなくて。この時はすごく楽しくて、帰りの電車で帰りたくないってだだをこねたのを覚えてます」 広瀬は写真たての中の両親の顔をなでた。「夏だったんですよ」と彼は言った。「暑かったけど、湖は涼しかった」懐かしむ声だった。覚えていることはわずかだろう。「俺、今、この時の母と同じ年です」 広瀬の両親の時間は止まったままだ。幼い頃の記憶はあいまいで、こんな一枚きりの古い写真の方がはるかに鮮明だ。 「今度、ここに行ってみよう」と東城は言った。「この写真の場所を探そう」 広瀬はまばたきをして、うなずいた。 そして、写真たてを自分の部屋の机の上に置いた。

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