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第19話

ふと、彼が右手を左胸の上にのせた。そのまま、じっと動かないでいる。 じわじわと、その掌の熱が身体に伝わってくる。節がごつごつした太い長い指。 掌も分厚くて大きい。ふと、その指が中に入って自分を翻弄したときのことを思い出した。 それほど前ではない。一階の風呂場で、好きなようにかき回し、広瀬が降参するまでからかうようにもてあそんできた。たまらなくなって腕にすがりつき、早く入れてくれと懇願したのだ。 思い出すだけで恥ずかしいし憎らしくなる。でも抵抗できない。こんな指一本で広瀬は思いのままだ。 今も、胸に手を置かれているだけなのに、じわじわと感じてくる。 「ふ」と吐く息に声が混じった。あわてて唇を噛んだが遅い。 見上げると目が合う。東城が傲慢な笑みを浮かべている。「心臓がドキドキしてる」と彼は言った。「もしかして、期待してくれてるのか?」 「俺を満足させられるんですか?」と少し虚勢を張ってみた。 「どうだろうなあ」と東城はのんびりした口調で言った。指が、くにっと左の乳首をつまんでこねる。人差し指と親指で挟むとこすりあわせてきた。痛みとしびれが身体中を走る。 「どうやったら、お前、満足してくれるのかな」ともう片方の乳首に唇を寄せて言う。「頑張ってご奉仕させていただきますよ」そういいながら胸に顔をつけてきた。 しばらく優しく舌で乳首なぶられた。吸われたり、舌先でつつかれると乳首だけじゃなくて背中から腰にかけて、快楽がじわじわと広がっていく。腰が浮きそうになったので、我慢して目を閉じた。 指がいじっていた左の乳首に歯を立てられた。痛みよりもピリピリとした刺激が怖い。 「んっ!」と声が出る。ぎゅっとまぶたに力を入れて、右手を握りこんだ。掌に爪を立て、意識をそちらにもっていこうとしてみた。 顔が胸から離れ、今度は、ベロっと大きな舌が頬から瞼をなめる。それから、左耳に唇が寄った。

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