25 / 193

第25話

ついこの前のことだ。以前岩下教授が勤めていた大学の准教授が、宮田と広瀬に連絡してきたのだ。 岩下教授の弟子だった2人の研究者が、別な大学に移った後、自殺をした。 准教授はこの2人と知り合いだったのだ。彼は、最初に話を聞きに行ったときには情報を持っていなかった。だが、最近になって自分から連絡をしてきた。2人の自殺と関係ありそうな実験について、知っていそうな人物に話を聞いたというのだ。 その人物は、自殺した2人の知人で、今は、企業に就職をしているらしい。名前は明かすことができないが、匿名ならということで情報提供があったのだ。研究者ではなく、事務方の人間だったようだ。 岩下教授の研究室には特定のメンバーからなるチームがあり、そこでは何かわからない研究をしていたらしい、というのだ。 研究は大学内だけではなく外部の研究機関と結びついて行われていたという話も合った。予算がどこから出ているのかや、誰がどこまでそのチームに関わっているのかはわからない。 この話を受けて、宮田と広瀬は、岩下教授の研究費の明細を調べ始めていた。 一見、出所が不明な研究費はないようだった。だが、書類の作り方が複雑で、まだ、わからないことが多かった。 話を聞く範囲も広げいているところだった。岩下教授に関係した研究者をかなり前までさかのぼって名簿を作っていたところだった。教授になる前のことも調べている。 岩下教授の恩師の滝教授も名簿にはあがってきていた。広瀬は、いずれ、滝教授の研究所にも訪ねるつもりでいた。 岩下教授にも、再度の面会を申し入れ、実際に会った。だが、前回と同様、自殺と実験に関係するような話にはならなかった。 その際、様子も普通だった岩下教授が、急に死亡したのだ。宮田でなくても動揺する。 広瀬は宮田の後を追って、家の中に入った。

ともだちにシェアしよう!