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第45話
東城と一緒にホテルの前でタクシーに乗ったが、また、すぐに眠ってしまった。
家の裏門について東城に起こされ、庭を歩くうちにやっと目が覚めてきた。
リビングで座って休んでいると、東城が、グラスの水を持ってきてくれたので一気に飲み干した。
まだ、頭がふらっとする。それほど飲んでもいないのだが。それに、疲れてもいない。
「頭痛くないか?」と東城が聞いてきた。じっと自分を見ていた。
「大丈夫です。すこし、ぼんやりしてるだけです」
「吐き気は?」
「ありません」と答えた。そして、聞いてみる。「橋詰さんと一緒にあの部屋にいらしたんですか?」
見上げると「ああ」と東城はうなずいた。
「どうしてあのホテルが分かったんですか?」
「橋詰さんから電話があったからだ。俺のことを知りたかったそうだ。墓参りですれ違ったたからな、誰なんだと思ったそうだ」
「そうですか」と広瀬は言った。不愉快なことを橋詰が言ったのだろうか。東城は苦い顔をしている。「橋詰さん、なにか、言っていましたか?」
「いや、特には。ただ、俺に会ってお前のことを話したかっただけだと思う」
「俺のことを?」
「彼は、お前のこと、子どもみたいに思ってるんだ。お前の親代わりは伯父さんご夫妻だけじゃなくて、大勢いそうだな。で、地味に暮らしてるはずのお前が、こんな家に引っ越したから、どうしたのか気になったんだろう」
「そうですか」と広瀬は言った。「橋詰さんは、岩下教授の件で、誰が圧力をかけたのか、内部を調べてくれるそうです」
東城はうなずく。彼は、広瀬の手からグラスをとると、キッチンに片付けに行った。
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