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第71話

元村は肩をすくめた。 「詰問かよ。お前のことなんてどうして拓実は仲間にしたがるんだろうな。拓実が、お前を探したがっていたのはわかるよ。ガキの頃、実験のせいで、拓実はずっと不安でうなされてた。お前が一緒の時だけは、安心できてたらしい。だから、お前を長い間、探してたんだ。でも、実際あったら、お前はあっち側の人間じゃないか。しかも、お前、拓実の好意につけこんで、このうちにまできて、拓実を疑ってかかってる。最悪だよな。拓実はお前は変わってないっていうけど、全く、そうだ。お前、チビのころから誰にもなつかなかった。無表情でさ。俺たちの誰が泣いてようが、怒ってようが、ずっと、何とも思っていない感じだった。今でも、白けた顔しやがって。お前、本当に、感情なんてないんだろ。よくできたきれいなロボットみたいなもんで。拓実が、お前のことを大事にしようがなんだろうが、どうとも思ってないんだ。拓実を疑うし、いつでも犯罪の証拠があれば逮捕だってするんだろう。それに、ほら、お前、俺にこんなふうに言われても、何も感じてないんだろ」 広瀬は、何も言えなかった。 元村から、嫌悪が刃物のように鋭くむけられていた。 その時、忍沼がゆっくりと起き上がった。元村の声に目が覚めたようだった。 「融、来たんだ」 「ああ」と元村は返事をする。「寝てろよ。お前、風邪全然治んねえな」 「そうでもないよ」と忍沼は言う。 そして、広瀬と元村に聞いた。「あきちゃん、融に話したの?」 「近藤を拉致してるかって、聞かれた」と広瀬が答える前に融が言う。呆れたようにしている。 忍沼は微笑んだ。「ほらね。融だってそんなことしないよ」と彼は言った。

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