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第80話

東城は、竜崎と共に岩下教授が勤めていた大学から提出された書類を整理し福岡に報告した。 福岡からは、近藤が勤めていた研究所の情報漏洩の可能性を探る以外に、岩下の研究費についても追いかけろと言われている。 その日は朝早くのミーティングだった。 岩下の研究費は、複雑で、多岐にわたっていた。国や自治体、団体、企業など、広範囲からかき集めているという感じだった。警察関係の団体からもわずかだが助成金がでている。 福岡は、要点を報告する竜崎にうなずいた。 「精査しても、わからないことが出てくる可能性があるな」と彼は言った。 「着服していたということですか?」 「そうかもしれん」と福岡は答えた。「研究費が地下に潜って、裏金になることもある」 「裏金ですか。今回の事件も、その可能性があるのですか?」 「近藤理事はハンガリーの友人と連絡を取っているんだろう。内容はまだわからないが、ハンガリーというのが気になる。オフショアを活用していた可能性がある。近藤さんが大金持ちとは聞いたことがない。研究所の理事とは言ってもオフショア利用するほどの給料はもらってないだろう。とすると、別ななにか大きな金を動かしていたのかもしれない」 「それは、どういうことですか?」と竜崎が聞いた。 珍しく福岡の口は慎重だ。「古い話だ。俺が、近藤理事と一緒に仕事をしたのは、大井戸署の広瀬の父親の殺人事件のときだ」 「その事件の捜査本部にいらしたんですか?それで、広瀬に声を」と竜崎が言った。 「ああ。あまりにも父親に似ていて驚いたよ。幽霊かと思ったくらいだ。俺は、広瀬の父親の広瀬信隆のことは、事件の前から知っていた」 彼は、意味もなく指先で書類をもてあそび、ペラペラとめくる。 「彼は、俺から見てもいい男だった。優秀で、期待されていて、あらゆる嫉妬と羨望と称賛と陰口の中にいた。その陰口の中に、警察庁内部の裏金作りの話があったんだ。警察庁の官僚がらみの事件だから、水面下で慎重に捜査が行われていた。俺は、そのチームに呼ばれたんだ。広瀬信隆を探り、周辺の人間についても探っていた」 「本当に、裏金作りがあったんですか?」 「大学の研究費がらみで、大きな金が動いていたところまではわかった。今回の、この岩下とかいう教授の資料見たら、当時俺が調べていた大学に所属していた研究者だった。お前たちの整理した資料を見て、あの時のグループはまだ残っていたんだと思ったよ。久しぶりの名前だ。当時は滝教授という親玉がいて、脳関係の実験をしていた。その研究費を中心に不正があった可能性がある。研究費の一部が、実際の研究には使われず、裏金化したということだ。それも、かなりの大金だ」 「広瀬信隆がそれに関わっていたのですか?」

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