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第82話

捜査本部に戻ると、近藤がやりとりしていたハンガリー語のメールが翻訳されて戻ってきていた。ほとんどが、簡単にネットの自動翻訳でみた通り、季節のあいさつや近況を伝え合う言葉程度だった。 「これで全部か」と竜崎がざっと読み進めて言った。 東城はうなずく。 「話が、時々飛んでいるのはどうしてだろうか」と竜崎は言った。何ページか時系列でメールをみせる。「やりとりの内容で、わからなくなっているものがある」 ページをみると確かに、前のメールと次のメールで質問や回答がなりたっていないものがある。急に共通のハンガリー人の女性が無事に転職した話が入っていて、前後でかみあっていないのだ。 何度も読み返した。 「間違えたのかもしれないな」と竜崎が言う。「本来使うべき連絡手段とこのメールを」 東城もうなずいた。「この転職した女性というのが、福岡さんのいう裏金のことだったら」と言うと、竜崎が続ける。 「資金移動をさせたって意味かもしれない。だけど、これを証明するのは至難の業だ。ハンガリーのオフショアの情報か。かなり難易度が高いな」 竜崎が珍しく弱気になったのかため息をついた。 「飯でも食いに行くか?」と東城が誘うと、竜崎はうなずいた。

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