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対峙 #3 side S
叔母さんは僕のことを話して欲しいと言った。けれど、血の繋がった冬葉のことを話すことが、叔母さんにとって最善だと思い、僕は冬葉のことを話す。屈託のない笑顔が僕から見てもかわいいこと。ランドセルの色は赤が良いと言い出し、家族総出で必死に止めたこと。時々、とんでもない言動をして家族を驚かせること。この前のひな祭りでは、女の子からのパーティーのお誘い全部にOKの返事をしてしまい、僕は冬葉を連れて女の子の家を何軒もハシゴするはめになったこと。こんな風に友達からとても好かれていること。そして、未だに冬真と結婚することを夢見ていること。
「ええっと…それから…」
「うふふふ…もう大丈夫よ。真祐君。」
「あ…はい…」
「それにしても…葉祐君の言った通りね。」
「葉祐?」
「葉祐君がね、前に教えてくれたの。真祐も冬葉も冬真によく似てるって。芸術肌で繊細で控え目なところは真祐。無邪気で時に大胆なところは冬葉。特に真祐はとても優しくて、自分のことは二の次。どんな時でも無条件に人を思いやれる、人を愛せる本当に良い子で、そんなところもそっくりなんですって。本当だなぁって思ってね。あなたはさっきから冬葉君の話ばかり。きっと、私を気遣ってのことでしょう?」
「別に…それは…その…」
「あなたも冬葉君も葉祐君と冬真の子供。私にとっても二人は同じぐらい愛しい存在で、何ら変わらないの。だからお気遣いは無用よ。さぁ、今度はあなた自身の話を聞かせてね。う〜ん…そうね…やっぱり…おいおい聞いていこうかしら。とても緊張しているみたいだし、あなたは随分恥ずかしがり屋さんみたいだから。緊張が解けた頃、根掘り葉掘り聞いちゃうわよ。覚悟してね。」
イタズラ気味にウィンクをした叔母さんの可愛らしさに、僕も思わず笑みがこぼれた。
ああ…来て良かったなぁ。
心からそう思った。
外で車のクラクションが響いた。
「あっ、帰ってきた。」
叔母さんは立ち上がった。
「俊介さんかな?」
「ううん。きっと、弥生さん。あなたのお祖母さんよ。今日はディサービスに出掛けていたの。」
叔母さんはパタパタと玄関へ向う。その足音は何とも楽しげで軽やかだった。それに反して、僕の心は徐々に重たくなっていく。
僕のお祖母さん。
冬真を、自分の息子を殺めようとした人…
一体どんな人なんだろう…
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