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晴れの日に #1 side N
今日の葉祐さんは不安定極まりない。
それでも、頑張って平然を装ってるつもりなんだろうけど…もうね、バレバレなんだよ。笑っちゃうほどにね。
でも…分かる!痛いほど分かるんだ。葉祐さんの気持ち。だって…今日の冬真パパは特別だもん。色気がダダ漏れで香り立つよう。見惚れちゃうもん、俺だって。思わずため息が出ちゃうほど。
だけどさぁ…そういうアンタだって人のこと言えないからね。冬真パパのそれとは違うけど、充分、人の目を引き寄せるんだよ。
ああ…俺も心配だよ…
真…
一言で言うなら、そう『やきもき』が近い。今日の葉祐さんは、朝からずっとそんな感じ。
「冬真?ネクタイ手伝おうか?」
「うん…ごめん…」
「いいって!ほれ、ちょっと顎上げて。」
冬真パパは少し顎を上げる。元々シャープで美しい横顔が更に研ぎ澄まされ、更に美しさを増す。
「あーあ…今日の冬真、誰にも見せたくねえなぁ…」
おいおい!心の声がデカすぎるだろ。
「ようすけ…僕…やっぱり…行かない方が…いいかな…スーツ…似合わない…冬くん…笑われたら…かわいそう…」
あ〜あ…こっちはこっちで自分のこと、全然分かってないし。その逆だっーの!
ちょっとしょんぼりする冬真パパに、葉祐さんはため息をついた。ここは一つ助け船出しましょうかね。
「葉祐さん!」
「あん?」
「葉祐さんも早く準備しないと。もうそろそろ、真と冬葉が挨拶まわりから帰ってくる頃だよ。冬真パパの仕度は俺に任せて。」
「おっと!もうそんな時間か…じゃあ、悪いけどよろしくな!」
時計を見上げ、葉祐さんはパタパタとスリッパを鳴らしてリビングから出て行った。
「直くん…」
「ほらほら、そんな顔しないの。せっかくの晴れの日なのに…それにね、似合わないんじゃなくて、その逆で似合い過ぎなの。俺だったら、こんな素敵なパパがいたら、皆に自慢しちゃうね。冬葉もそうだと思うよ。大喜びだね、きっと。」
「ホント?」
「うん。葉祐さんは冬真パパを独り占めしたいだけ。独占欲と戦って悶々としてるの。だからさ、冬真パパは何も気にしなくていいんだよ。っーか、俺も心配だなぁ。真、今日も可愛かったし…卒園式の時もファンが押しかけて、スゲー囲まれてちゃって、色々触られてたって言ってたし…それに今日はアイツだけ主賓席で別行動でしょ?すぐに助けてやれないし…」
「うふふ…真くんも…心配しているね…きっと…」
「えっ?何で?」
「鏡…見て来て…すぐに分かるよ…うふふ…」
冬真パパは小さく笑う。その姿は本当に美しく、やっぱり色気がダダ漏れで、会場で一際目立つに違いない。色々な意味で冬真パパを誰にも見せたくないっていう葉祐さんの気持ちが、痛いほどよく分かる。
今日は冬葉の入学式。
何だか…一波乱ありそうな予感。
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