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晴れの日に #4 side F
「悪い、冬葉!冬真パパ迎えに行って来るから、そこのベンチで座って待っててくれるか?直ぐに戻るから。」
「うん。ふゆくん、ここでまってるね。」
葉祐パパは急いで校長先生のお部屋に行ったよ。6年生の先生と冬真パパがお友達で、冬真パパが真ちゃんのパパだって分かると、お友達先生は、冬真パパを校長室に連れて行っちゃったんだって。葉祐パパとのお約束通り、下駄箱のそばのベンチで座って待ってよ〜っと。
「よっ!」
きのこのお歌を歌っていたら、知らないおばさんが来て、冬くんのお隣に座ったよ。先生かな?
「面白い歌だな。」
「きのこのおうた、だいすきなんだ。ようちえんのうんどうかいで、おどったんだよ。」
「そっか。楽しそうだな。」
「おばさんは、せんせい?」
「いや、普段は病院の研究所で働いてるんだけど、時々、こうして学校の保健室のお仕事の手伝いをしてるんだ。で、お前はここで何してる?」
「パパをまってるの。」
「どっちの?」
「りょうほう。でも、なんで?なんで、ふゆくんにパパがいっぱいいることしってるの?」
「えっ?そっ、それは…カン…だな。うん。カンだ。」
「ふ〜ん…とうまパパがね、6ねんせいのせんせいとおともだちでね。とうまパパをこうちょうせんせいのおへやにつれてちゃったんだって。しんちゃんもいるからって。それで、ようすけパパがおむかえにいったの。『ひとじちをだっかんしにいく』って。」
「全く…相変わらずバカだなぁ…海野は。しかし…岩崎に教師の友達?初耳だな。」
「うみの?いわさき?」
「あーいやいや、何でもない。こっちの話。そんなことより…どうだ?毎日楽しいか?困ってることとかないか?」
「こまってることはないよ。ふゆくんはラッキーだからね。まいにちたのしいよ。」
「ラッキー?」
「まいにちたのしいことばかりだとハッピーっていうんだけど、ふゆくんはハッピーのほうからきてくれるから、ラッキーなんだって。しゅんパパがおしえてくれたんだ。」
「へぇ〜さすが藤原さん。良いこと言うな。」
「えっ?しゅんパパ、しってるの?」
「えっ、あっ…うっ…まあ…な。う〜ん…それはさておき、お前、大きくなったら何になりたい?」
「う〜ん…なりたいものはいっぱいあるけど…いちばんは、おいしゃさんかな。」
「医者かぁ…また何で?」
「とうまパパのいとこちゃんが、おいしゃさんなんだ。おうちにみたことないおどうぐがいっぱいあるんだよ。おもしろそうだし…それにね、おいしゃさんになって、はやく、とうまパパのびょうきをなおしてあげたいの。」
「冬真パパ…そんなに悪いのか?」
「ときどき。」
「そっか…私もさ、友達がずっと病気でさ。早く治してあげたいって思ったから、病院の仕事してるんだよ。」
「おばさんもおいしゃさん?」
「いや、私は薬の勉強したり、薬を作ったりする人。」
「そのおともだちはなおったの?おばさんがつくったおくすりで。」
「ううん。少しだけ良くなる薬は作ったんだけど…完全に治る薬はまだ作れてないんだ。まだまだ勉強中。」
「そっか。はやくできるといいね!おばさんも、おくすりのおぺんきょうがんばってね。ふゆくんもおいしゃさんになれるように、がっこうのおべんきょうがんばる!やくそくだよ。」
「うん。約束!さぁて、そろそろ行くかな。研究所戻って薬の勉強しないと。お前と話せて良かったよ。楽しかった。ありがとな。」
「うん。ふゆくんもたのしかった。」
おばさんはバイバイって言って歩き出したの。あっ、いけない!しゅんパパのお友達なのに『さようなら』言うの忘れてた!
冬くんはおばさんに聞こえるように大きな声で言ったよ。
「さようなら!またね!さやかちゃん!」
おばさんはとーってもビックリして、お目々がまんまる。きっと、冬くんの声が大きくてビックリしたんだね。うふふ。
あっ、そうだ!忘れないうちに書いておかないと。冬くんは、さっきお教室でもらったノートとえんぴつで、初めて漢字を書いたよ。おばさんのバックからはみ出てたた名札の字、『さやか』は読めたけど、漢字は分からなかったの。だから、ノートに書いておいて、葉祐パパが帰って来たら聞くんだ。
確か…こんな字だったかな。
何ていう字かな?
今日は冬くんの入学式。
冬くんはもう二つも漢字が書けるようになったよ。
パパ達…早く帰って来ないかなぁ…
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