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Fuga da casa #1 side T
「ちょい、真!待てよ!真!」
「何?」
「何って…お前さ、この前から何怒ってるんだよ!」
「べ…別に。僕は怒ってない。それとも何?君、僕に怒られる様なことしたの?」
「するワケないだろ?そっちこそ何だよ!怒ってないって言う割には、俺のこと『君』とか言っちゃってさ。怒ってんのバレバレだろ。」
「怒ってないって言ってるでしょう!」
「自覚ないみたいだから言わせてもらうけど、お前、俺に対して気に入らないことがあると、俺のこと『君』って言うからな!」
「もういいよ!僕のことは放っておいて!」
「真!」
真くんは勢いよくドアを閉め、リビングを出ていった。そして、僕と直くんだけが残された。
直くんと真くん。
ここのところ二人はずっとこんな感じ。冬くんの入学式ぐらいからかな。真くんはずっとイライラしてる。珍しく。葉祐に相談しても『なるようになるから、放っておけ』って言われちゃう。最近じゃ、冬くんてすら、そんな二人をすっかり見慣れちゃっている。
僕と目が合うと、直くんはバツが悪そうに隣に座った。
「ごめんね。冬真パパ。こういうの一番苦手なのに…」
「ううん…こちらこそ…ごめんね。真くんが…」
「パパが謝ることじゃないでしょ?」
「でも…」
「俺がさ、何か気に入らないことしちゃったんだよ。それさえ分かればいいんだけど。まぁ、自分の口からは絶対言わないだろうからな…汲み取れなかったら迷宮入りだな。」
「真くんが…ああいう態度とるときは…ヤキモチ…」
「何で分かるの?」
「真くんは…ようすけの子だもの…」
「なるほどね〜しかし…どうやったらご機嫌直るかなぁ…原因も何かわからないんじゃ手のつけようがないしなぁ…かと言って、このままってワケにも…」
直くんはすっかり困り果て、眉毛をハの字にしたまま、ずっと宙を見ている。
葉祐…こうなってしまったら…
なるようには…ならないと思う…
直くんが…かわいそうだよ…
「ねぇ…直くん?」
「うん?」
「学校は…まだ休みだったよね?」
「うん。再来週から。」
「そう……じゃあ…僕と…家出しよう。」
「えっ?」
直くんは驚きのあまり目をパチパチ。
笑うと可愛い直くんだけど、驚く顔も可愛らしい。僕がそんなこと言うなんて、思ってもみなかったんだろうなぁ…うふふふ…
僕だって…やるときは…やるんです。
ちょっとだけ…真祐にお灸を据えないとね。
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