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Fuga da casa #2 side Shun

「家出…ですか?」 「はい。僕たち…家出しました…」 愛する彼は俺の問いに対して、笑顔でそう答えた。それとは対照的に、居心地悪そうにこちらを伺う直生。 「良かったら…ここにおいて…もらえませんか?」 笑顔から一転、冬真さんは迷子になった仔犬のように俺を見つめる。コロコロと表情を変えるのは、随分と調子が良い証拠だろう。 「私があなたを追い出すワケないでしょう?さぁ、上がって。」 「ありがとう…しゅん…」 最後まで名前も言えないほど大喜びで、子供のように無邪気に俺に抱きついた。その体勢からヒョイっと彼を横抱きにする。 「直生、悪いが靴を脱がせてやってくれ。」 「あっ、はい。」 それまで俺と冬真さんを交互に見ていた直生。ずっと目を見張り、何をそんなに驚いているのやら。 「君も上がりなさい。詳しく話を聞こうじゃないか。」 「僕には…聞いて…くれないの?」 冬真さんは拗ねた子供のように尋ねる。 「聞きますよ。でもその前に…ここまではどうやって?」 「歩いて…」 表情を覗き見れば、そこには褒めてと書いてある。だから、少し大袈裟に言う。 「歩いて?それは驚きました!のどが渇いたでしょう?すぐにお茶の準備をします。」 「あっ、俺、手伝います。」 「すまないな。」 直生は慌てて靴を脱ぎ、キッチンへと向かう。 「本当に…いい子…」 それを目で追いながら冬真さんはポツリと呟いた。 「ええ。ところで…家出とはまた突飛な行動てすね。ケンカでもしたんですか?葉祐さんと。」 「ううん。僕じゃ…ありません。」 「なるほど……真と直生…ですか。」 「ええ。ようすけは…放っておけ言います。でも僕は…見てられません…」 「……の割には随分楽しそうですけど?」 「だって……」 「だって?」 「初めてなんですもの…家出するの。」 冬真さんは嬉しそう。 ああ…そうだ! この人の本質は…好奇心旺盛な天然天使くん。 冬葉と同じ血が流れているんだった。 「でも…行き先は…ここ以外…思いつかなくて…しゅんすけさん…何があっても…僕を助けてくれるから…絶対に…そうでしょう?」 再び、無邪気な笑顔をこちらに向けた。 「あーあ。随分と買いかぶられたもんです。ハードルが高くて、むしろ、弱味を握られた気分です。」 大袈裟に天を仰ぎ、それから彼の額にキスをした。 うふふふ… 冬真さんは小さく、そして…可愛らしく笑った。

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