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Fuga da casa #4 side N
「それで?家出の理由は?」
寝室からリビングに戻り、ソファーに座った途端、俊介さんは切り出した。
「それが俺にもよく分からなくて…とにかくずっとご機嫌ナナメなんです。真のヤツ。冬葉の入学式辺りぐらいからずっと…」
「入学式…ねぇ…」
俊介さんは何かを思い出すように腕を組み、宙を見つめた。
「君も出席したんだったな。」
「出席と言っても、理君のカメラ係ですけど。」
「あの幼稚園、卒園した子のほとんどが同じ小学校に通うのだろう?」
「ええ。」
「当日は知ってる顔が多かった。」
「ええ。道すがら、挨拶だけで結構時間がかかってしまいました。でも、これからの付き合いもあるから、反故するワケにはいかないし…」
「なるほどな。」
そこまで言うと俊介さんは立ち上がり、キッチンでコーヒーを淹れる準備を始めた。
「ところで、直生。真と寝たことは?」
突然の質問に、口に含んでいた冷めたミルクティーを吹き出しそうになった。
「ゴホッ、ゴホッ、何なんですか!突然!」
「その様子だと…ないんだな。」
「そりゃ……そうなりたいと…切実に思いますけど…その…どうやってそこまで持っていけば良いのか…きっかけを作れないというか…術も分からないというか…」
「そうだな。何て言ったって、あの堅物が相手だからな。」
「俊介さんならどうします?」
「えっ?」
「俊介さんが真の恋人だとして、真を抱きたいって思った時、俊介さんならどうしますか?」
「……さあな。」
「さあな…って…」
「俺は真をそういう目で見たことないからな。」
「じゃあ、もし仮に俊介さんが俺の立場で、相手が真じゃなくて、冬真パパだったらどうします?どうやってパパを抱き…」
常に冷静沈着で、あまり動じることのない俊介さんの表情がその時一変した。それも一瞬だけ。だけど、俺はそれに驚いて、咄嗟に口を閉ざしてしまう。そんな俺を気にすることもなく、俊介さんはいつもの調子で言う。
「俺は少し仕事をしてくる。家出は穏やかじゃないが、君と真をしばらく引き離すという冬真さんの選択は間違ってはいない。ここでしばらくゆっくりしていくと良い。ただ、葉祐さんには連絡しておく。心配するからな。それから…君の分のコーヒーも淹れておいた。良かったら、温かいうちに。」
俊介さんはマグカップ片手にリビングから出て行った。目の前には、一緒に残されたマグカップが一つ。
さっきの俊介さんの表情…
どう形容したら良いのだろうか。
驚き?
焦り?
恐れ?
どれも当てはまりそうで、どれも違うような気がする。
そもそも、どういう関係なんだろう…
葉祐さんと冬真パパ、それから…俊介さん…
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