55 / 132
Fuga da casa #6 side N
真に夕食をもてなすと、俊介さんはどこかへ出掛けて行った。時間にして20分程経過した頃、俊介さんは帰宅し、真は食後のコーヒーを飲んでいた。『ジロジロ見ないでよ』と怒られながらも、隣で真の顔を見ていた。
コトリ。
俊介さんがテーブルに何かを置いた。それは大きなキーホルダーがついた鍵だった。
「これはゲストハウスの鍵だ。場所は分かるな。」
別荘地内にはゲストルームとゲストハウスの両方あって、ゲストルームは一つの建物内に何部屋かあるマンションのような造りで、それに対し、ゲストハウスは大人数を収容出来る施設で、戸建てになっていた。
「場所は分かるけど…」
「これを期に、ここでもう少し話し合って来い。」
「「えっ?」」
「二人きりでゆっくり話し合うなんて、自宅じゃ無理だろう?」
「でも…お父さんは?」
さっき興奮したからか、疲れ気味にソファーに身を任せる冬真パパを二人して見つめた。
「少し疲れたみたいだから、今日はうちに泊めて、明日、俺が自宅へ送る。」
「だけど…」
何か言おうとした真を制し、俊介さんはちょっと厳しい表情で言う。
「真…そろそろ決め時なんじゃないか?覚悟を。」
「覚悟…」
真はそこで黙り込んでしまう。さっぱり状況の分からない俺は真に尋ねる。
「なぁ、真。覚悟って?何の覚悟?」
すると、程なく平手打ちが飛んできた。
「あっ、痛っ!何すんだよ!ひでー!ひでーよ!」
俊介さんは呆れたような、憐れむような表情で俺達を見つめた。
ともだちにシェアしよう!