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天使との旅路、前日のこと #1 side N

♪Are you going ~ ホテルのバルコニーで真が口づさんだその歌を聴くのは久々だった。高校の頃、苦しいことがあると、屋上に上がって、この歌をよく口づさんでいたっけ。今の真は苦しいワケじゃない。明日のことが不安なだけだ。明日は冬葉とボスの対面を控えていた。パパと冬葉、二人だけで旅をさせるために、俺達は前日の今日から一足先に上京していた。 「真?」 真の隣に並ぶと、真は歌を辞め、どこか切なそうに俺を見つめた。 「夜景…キレイだね。夜なのにこんなに明るいなんて…さすがは東京。」 「そんな顔をするなよ。大丈夫。二人の力を信じようぜ!明日はこの部屋も相当賑やかになる。誰にとっても最良な日になるよ。そのために俺達、今日まで頑張って来たんじゃないか。たくさんの人々の協力も得て、話し合いもシミュレーションも何度となく重ねた。これだけ最善を尽くしたんだから、上手くいかないわけないよ。」 「直…」 「明日二人に会ったら、とにかくめちゃめちゃ褒めてやろうぜ!冬葉なんてスゲー鼻の穴膨らませて、冬真パパを守ったって得意気に話すんだろうからさ。」 そんな冬葉を想像したのか、真は少し間をおいてクスっと笑った。 「うん、そうだね。めちゃめちゃ褒めて、少しだけ甘やかそう。」 「ひぇ〜少しだけかよ?お前は相変わらず、厳しい兄ちゃんだなぁ。」 「僕がめちゃめちゃ甘やかしたら、冬葉の方が不審に思って近づかないよ。きっと。」 冬葉の不審がる時の仕草、物陰に隠れて、遠くから細目でこちらを伺う様子を想像して、俺は思い切り吹き出した。 「だな。間違いない。」 「ねぇ、直?」 「うん?」 「僕も先取りで…甘やかしてもらっても良い?」 「おうよ!」 「あのさ…髪の毛洗ってくれない?乾かしてもらえると、なお、ありがたいんだけど…」 「お前さ…分かって言ってる?髪の毛を洗うってことはさ…それだけじゃ済まないんだよ。俺は。」 「もちろん。分かって言ってるよ。明日はこの部屋も賑やかになるんでしょ?だったら…今日だけじゃない?」 「真…」 「両親との同居。しかも、小学生の弟付き…本当に感謝してる。直が普段とても我慢してくれてるの分かってるんだ。だから、こういう時ぐらいは…ねっ?僕…準備してくる…」 真は照れながらバスルームへ消えて行った。 東京にほど近いホテルのスイートルーム。明日になれば、この広い部屋に俺達の他に三人が宿泊する予定。

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