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天使との遭遇 #4 side M (Mikako Yajima)
開いた扉の向こうには…
ウサギが立っていた。
厳密に言えば、ウサギの着ぐるみを来た美少年。実に可愛らしい姿なのだけれど、思いもよらなかったものの登場に驚いたのか、少年の美しさに戸惑ったのか、自分でもよく分からなくなるほど言葉がさっぱり出て来ない。
「こっ、こっ、こんにちは。」
「こんにちは。」
ウサギくんはペコリと頭を下げた後、私を見つめる。見覚えのある琥珀色の瞳で。
「えーっと…あの…こちらは里中さんのお宅でしょうか?」
「はい。」
「ええっと…その……私…」
あたふたとする私に救世主が現れた!冬真おじさまだ。
「あれ?未華子…さん…?」
冬真おじさまが奥から顔を覗かせた。
「おじさま!良かったー!」
「どうしたの?真くんと約束かな?でも…今日は生憎…」
「違うんです!今日はEvergreenのバイトの初日で…あっ、あの正式なバイトの。それで、葉祐さんが良かったら、おじさまに会っていかないかって。今日は調子が良いみたいだからって。もうすぐ葉祐さんも来ます。」
「ああ、今日からだったんだね…バイト。ありがとう。ここじゃ何だから…さっ、上がって。それにしても…すごいね、冬くん。本当にお客様だ。」
「うん。」
おじさまとウサギくんが互いに見つめ合って、ニッコリと微笑む。もうこれだけで小説のネタになりそうで、ペンを走らせたい衝動に駆られる。これだけでもかなりウズウズしちゃうのに、ウサギくんは両肘を折り、左腕の方を背中に回した。右腕は前に出し、手首から肘にかけて持っていたタオルを掛け、一礼した。さながら執事のよう。それから、私に眩しい笑顔を向けて言う。
「ようこそ!ティーパーティーへ!」
ティー……パーティー…?
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このエビに出てくる未華子さんは「Another stories」の「書店での出来事」#1〜#3と「MNM」#1にて登場します。併せてお読み頂けると嬉しいてす。
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