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天使との遭遇 #5 side M
ウサギくんは私をソファーまでエスコートすると、正面に立ってペコリと頭を下げた。
「こんにちは。はじめまして、里中ふゆはです。8さいです。」
「こっ、こんにちは。矢島未華子です。」
「みかこちゃん、ふゆくんのティーパーティーへようこそ!もうすぐ、おちゃが入ります。どうぞ、すわっておまちください。」
ウサギくんはまたペコリと頭を下げる。
ソファーに座ると、冬真おじさまが隣に座った。そして、こっそり耳打ちする。
「ごめんね…未華子さん…付き合わせてしまって…」
「いいえ。とても嬉しいです。こんな風にエスコートされたの、人生初なので。」
「さっき、届いたばかりなんだ…このティーセット。最近、その送り主から紅茶の淹れ方を習ったばかりでね…上手に出来たご褒美なんだ。」
おじさまはちょっと苦笑いした後、ちらりとテーブルに置かれたティーセットを見た。ウサギが主人公の童話の挿絵が描かれた、全てが小振りの子供用。
「かわいいですね!むしろ、お客様第一号なんて光栄です。でも、ウサギは何で?ティーセットの柄に合わせたんですか?」
「ううん。あれはね…去年…市内のハロウィンパレードに出た時の衣装なんだけど…ウサギは彼のお気に入りでね。ティーセットが届いて…ティーパーティーをしようってなって…それならウサギがいなくちゃって…ほら、女の子とウサギがティーパーティーするお話があるでしょう?その本を最近、真祐に買ってもらったばかりでね…今の彼の愛読書なの。ご褒美の、しかも自分専用のティーセット…お気に入りの衣装と本…そこへ本の内容と同じく女の子が現れたものだから…」
「なるほど!自ずとテンションアップですね!でも、その女の子…私で良いんでしょうか?」
「どうして?」
「迷い込んだ女の子にしては、私は随分歳を取り過ぎているかと…」
冬真おじさまは穏やかに首を振った。そんな些細な仕草も完璧な美しさで、思わず見惚れてしまいそうだ。
ウサギくんは私とおじさまに紅茶を差し出す。
「ししょう直伝のじまんのこうちゃです。どうぞ、めし上がれ!パパは少し冷めてからめし上がれ!」
ウサギくんはまたもやペコリと頭を下げる。いただきますと紅茶を一口啜ると、華やかな香りがぱぁと広がって、こんな小さい子が淹れた物とは思えないほど美味しかった。
「美味しい!あなたは紅茶を淹れる天才かもしれませんよ!ウサギくん!」
ウサギくんはぱぁっと満面の笑顔を見せた後、隣に座るおじさまに抱きついた。
「パパぁ〜ふゆくん、みかこちゃんにほめられた!」
「良かったね…冬くん…」
おじさまは愛おしそうにウサギくんを抱きしめ、彼の頭を何度も撫でる。ウサギくんも嬉しそうにニコニコしながら、おじさまに抱きついている。その姿は余りにも温かくキラキラしていて、見ているだけで幸せな気持ちになった。
「あっ、そうだ!チョコレート出そうか?ご褒美とお茶菓子兼ねて…」
「えっ?!」
ウサギくんの瞳が輝き出す。
大好きなんだね…チョコレート。
「確か…この前…」
おじさまは立ち上がり、キッチンへと向う。ウサギくんはその後を弾むように着いていく。左右にスイングする尻尾がウサギくんの気持ちを表しているかのよう。
「和臣君が持ってきてくれたのが…あったよね…」
おじさまがそう言うと、ウサギくんのスイングがピタリと止まった。
「パパぁ…」
ウサギくんの余りにも悲しそうな声におじさまは振り返り、しゃがみ込んで視線をウサギくんに合わせた。
「何?どうしたの?冬くん?」
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