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独占欲 #1 side T
Evergreen定休日のルーティン。
子供達を送り出してから、葉祐はいそいそと家事を始める。まずは、朝食の後かたづけ。それから掃除機。僕は洗濯。それから、ちょっと早いイレブンジズ。お供はいつものように、少し冷ましたミルクティーと2枚のいちごジャムサンド。葉祐と二人、ゆっくりと話をするこの時間が僕は堪らなく好きだ。
「そうだ…あのね、葉祐…」
差し出されたお茶の方にしばらく気を取られていた僕が葉祐に視線を移すと、葉祐は頬杖をつきながら、真顔で僕をじっと見つめていた。こういう時の葉祐は格好良すぎて、僕はちょっとドギマギしてしまう。
「何?」
「いや。」
「…穴が…あいちゃう…」
「えっ?」
「そんなに見つめられたら…穴があいちゃうよ…」
「ああ、そっか…いや、ごめん。」
「何か…言いたいことでも?」
「いや、良いんだ。気にするな。」
「でも…」
「ホント大したことじゃないし。」
「そう…」
消化不良。
でも、本人がそう言うのだから仕方がない。ちょっと寂しいけれど。そんな僕の気持ちを察したのか、葉祐は努めて明るい声で言う。
「今日のお茶はさ、和臣君直伝だぜ。」
「えっ?いつ教えてもらったの?」
「いや、俺じゃなくて冬葉。アイツ、和臣君のとこから帰ってくる度、上手くなってるよな?お茶淹れるの。そのうち、茶道の家元にでもなりたいとか言い出しそうで、俺、ちょっとビビってる。」
「うふふ…ティーインストラクターかもしれないね。和臣君もこの間取得したし…でも…冬くんは…どんな職業でも…成功しそうな気がする…親バカ…かな?うふふ…」
マグカップの表面に未華子さんの姿が浮かんだ。
『そうよ!おじさま、その調子!』
そう言ってくれていた。余りのご都合主義に、僕は自嘲してお茶を一口啜った。
「そう言えば…葉祐?」
再び葉祐を見ると、葉祐はまた頬杖をついて僕をじっと見つめていた。
「な…に?」
「いや…」
「言って…」
「えっ?」
「大したことじゃなくても…言って…このままじゃ…寂しい…」
「……」
葉祐はすっかり黙り込む。もう一度、口を開きかけた時、葉祐は言った。
「キレイだな。」
「えっ?」
「お前がどんどんキレイになっていく…」
全身の血が集中したのかと思うほど、顔が一気に熱くなる。
「えーっと…その…ありがとう…でいいのかな…」
どうしたら良いか分からない僕は、何とか葉祐に微笑みかける。自分の顔を確認することは出来ないが、ヘラっとした何とも情けない笑顔になったのは分かる。その時、葉祐はプイっと顔を左側に背けた。
えっ?
「あーあ。未華子ちゃんなんだよ。絶対!分かってるんだ。未華子ちゃんはお前に何を言って、どんな魔法をかけたんだよ。俺の知らないところでお前がキレイになっていく…チクショー!」
葉祐は吐き捨てるように呟いた。
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