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独占欲 #3 side Y

話題を変えよう。出来るだけ明るい方へ。 そうだ!お茶! 今日のミルクティーは和臣君直伝。冬葉が先週、習ってきたものだ。やってみるとこれが意外にも奥が深く、冬葉同様夢中になった。そして、何とか形になったものを、和臣君の同意を得て、店で提供してみると、すこぶる評判が良かった。冬葉にはお泊りルーティンがあって、平塚家、西田家、時々、朱美さん、そこへ最近、和臣君が増えた。冬葉は今、和臣君にお茶の淹れ方を習うのに夢中だ。そのうち、将来、その道に進みたいと言い出すのではないかと密かに考えていた。そのことを冬真に告げると、冬葉ならどの道に進んでも大成するだろう、そして、そんなことを考える自分は親バカだろうかと微笑んだ。 やっぱりおかしい… 冬真が『親』という言葉を発すること、しかもそれを自分に対して使うこと、今まででは考えられないことだ。そして、またカップを見つめる冬真は、溢れんばかりと美を放出している。 絶対、何かあった。 確信した。 しかし何だ?何があった? 「そう言えば…葉祐?」 カップから俺に視線を変えた冬真の表情は、みるみるうちに曇っていった。俺のせいだ。分かっている。 「な…に?」 「いや…」 「言って…」 「えっ?」 「大したことじゃなくても…言って…このままじゃ…寂しい…」 「……」 「キレイだな。」 「えっ?」 「お前がどんどんキレイになっていく…」 「えーっと…その…ありがとう…でいいのかな…」 どうしたら良いのか分からない時、今までの冬真なら、なす術なく、伏し目がちに、ただただ黙り込んだ。 なのに今はどうだ? ふにっと情けなさそうに笑う、その仕草でさえも可愛らしく、美しかった。 何だよ…俺の知ってるお前は違うだろ? 今までそんなこと…したことなかっただろ? くっそー!何なんだよ! 分かりやすくオロオロし始めた冬真。その姿も美し過ぎて、何だか腹が立った。とうとう我慢の限界。俺は分かりやすく冬真から視線を外した。そして…… 「あーあ。未華子ちゃんなんだよ。絶対!分かってるんだ。未華子ちゃんはお前に何を言って、どんな魔法をかけたんだよ。俺の知らないところでお前がキレイになっていく…チクショー!」 あーあ…言っちゃった… 完全な八つ当たり… いいおっさんが… ホント情けねぇ…

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