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和臣の選択 #3 side S & N

「それで?」 「最初はまぁ、やむを得ない場合に泊まるっていう話だったみたいなんだけど···今や住人っていうレベルらしくてさ。ご近所さんの評判もかなり上々でさ···」 「そうはそうでしょう。あそこで商売始めようって言うんだから。」 「いやいや、俺が言いたいのはそこじゃなくてさ。気にならないの?意外だろ?想定外だろ?俊介さんと和さんだそ?しかも同居って。」 「そうでもないんじゃない?和さんの仕事の特性を考えれば、近くに住まいがある方が絶対便利だし、俊介さんもそこを考えたんじゃないかな?俊介さん、ああ見えて情に厚いとこあるし。」 「俺はさ、余りにも意外過ぎて何かこうしっくりこないんだよ。二人ともタイプは違えど、一匹狼みたいなとこあるし···何がどうなったらそうなるんだろか?」 「余計なお世話だよ。どんな形にせよ、二人が決めたことなんだからそれで良いじゃない。僕は良かったと思うよ。俊介さんがずっと一人でいるのも心配だったし、和さんも危ういとこあるし···二人でいてくれた方が僕達としては安心じゃない?」 「まぁ···ね···」 「二人の後押しがなかったら、僕達はこうして安心して家を空けることも出来なかったんだよ。二人にはホント感謝しかないよ。特に直は感謝してもし足りないぐらいだよ。きっと。」 「えっ?何で俺?俺じゃなくてそこは出版社でしょ?別荘地へ行く時間を短縮出来たワケだし。」 「誰にも何にも気兼ねせず、こうして簡単に僕を裸に出来るようになった······そうでしょう?」 月明かりが窓から差し込み、その青白い光がベッドの端にいる裸の真を捉えていた。どこか神秘的で消え入りそうなその体を、どこへも行かないようにと包み込む様に抱きしめる。ここ数か月、真と俺は別荘地を離れていた。作品の映画化やドラマ化など相次いで決まり、執筆以外の仕事もかなり増えた。同時にその関連で東京と別荘地を行き来することも増えていた。俺達の身体的負担を考え、拠点を一時的に東京した方が良いのではと言い出したのは俊介さんだった。もちろん、真がそれに首を縦に振るわけはない。話が堂々巡りになりそうだったところ、市内に手を打つ方向へ導いたのは和さんで、和さんの上手い後押しの結果、俺達は市内の岩崎グループ傘下のホテルに期間限定の居を構えた。そんな二人がいつの間にか、同居を始めたという。それを聞いたのは今日偶然、市内のスーパーで会ったEvergreenの常連さんからで、余りにも意外過ぎる二人の同居に、俺は正直戸惑った。それに反して、真はかなり冷静で、顔色ひとつ変えない。ピロートークのテーマとしては実に色気がないせいだろうか? 「まぁ、何にせよ···」 そう言って、真はベッドを抜け出した。窓を背にしたせいか、月明かりは先程よりも強い光で真を照らす。 「ずっと一人で生きてきた者同士が、生活を共にしようと決めたんだ。何か思うところがあったんだよ。きっと。二人の背景にどんな感情があるのか分からないけど···僕達は静かに見守るのが一番なんじゃないかな···」 真は微笑んだ。微笑みと月明かりを味方に付けた真はとても神々しい。 「シャワー浴びてくる。ちょっとベタベタしてるし···何よりも直の欲望が僕から溢れ出てるし···」 真の内腿に白い物が流れ出ていた。俺は慌てて真の腕を掴み、ベッドに引きずり戻す。 「だーめーっ!まだするーっ!」 「えっ?」 「だって、俺はこの状況を感謝しなくっちゃなんだろ?だったら、もっともっと感謝して、その分、真の身体、俺だらけにしなくっちゃ!」 「はぁ?バカ·じゃないの?」 「バカだもーん!そんなのとっくに知ってるでしょ?長い付き合いなんだから。」 「はぁ······」 何か言いたげだった真の唇を塞いだ。 ため息が吐息に変わる。

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