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叫び #1 side N ~Naoki Sugano ~
それは夜も深い時間、突然響いた。
「うわぁぁぁぁぁぁ...」
まるで断末魔のようなその叫びに、俺は布団から飛び起き、冬葉を挟んだ向かい側で眠っていたはずの里中を探した。目が暗闇に慣れた頃、見つけた里中はスヤスヤと眠る冬葉の頭を撫でていた。
「良かった...起きなくて...良かった...本当に…」
「里中...」
「......」
「さっきのって...」
「多分...冬真...」
「大丈夫なのか?」
「葉祐がいるから大丈夫。葉祐の手に負えない時は、きっと俊介さんが来るよ。だから僕は...冬葉を守らなくちゃ...」
「守る?」
「父親のあんな悲痛な叫び声を聞いたら、不安になるでしょう?幸い冬葉はまだ聞いたことはない。冬葉には出来る限り、悲しみや不安から遠いところで育って欲しいんだ。」
「お前はどうなんだ?里中?」
「えっ?」
「お前だって、さっきみたいな親父の断末魔のような叫びを聞いたら不安になるだろう?そんな時、お前を誰が守ってくれる?誰がそうやって安心させてくれる?」
「僕は...僕は大丈夫。だって一番ツラいのは冬真なんだから。」
「...ったく...お前ってヤツは......こっち来いよ。」
「でも...」
里中は冬葉を一瞥した。
「大丈夫。冬葉は起きないよ。あの叫びですら起きないんだから。もし起きたとしても、お前のことだ気が付くだろう?その時、抱きしめてやれば良い。さぁ。」
枕を右にずらし、空いたスペースに里中を招き入れた。そして、俺達は布団の中で手を繋いだ。それから、里中は安心したように一つ息を吐き、クスクスと笑いだした。
「どうした?」
「冬真がね、少し前に教えてくれたんだ...」
「何を?」
「あんまり自分のことを話してくれる人じゃないんだけど、葉祐と再会した日、苦しくなるような出来事があって...その日一晩中、葉祐が抱きしめてくれたんだって。きっとこんな風だったのかなって思ってさ。」
「かもな。さっ、もう寝ろ。明日も冬葉のお守りだ。一日中振り回されるぜ、きっと。」
「そうだね...おやすみ...ありがとう…直くん...」
「おやすみ...真...」
いつからか呼ばなくなってしまった呼び方を互いに口にし、それから二人、静かに眠りに就いた。
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