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天使の負傷 #3 side S
「はぁ......」
キッチンで隣に並ぶ葉祐が珍しく溜め息をついた。
「どうしたの?溜め息なんてらしくもない。」
「だってさ...」
「園でのこと?」
冬葉が今日、幼稚園で友達に遊具から突き落とされ、病院へ搬送されたことは葉祐からのメールで知った。冬葉は冬真と一緒にリビングで絵を描いていて、そんな話を聞かない限り、いつもの冬葉と何ら変わらなかった。
「うん。友達のこと突き落とすって、よっぽどじゃね?恨みをかうようなこと、何かしちゃったのかな?冬葉。」
「冬葉が?冬葉に限ってそんなこと...」
「だろう?そうなんだよ。親の欲目かもしれないけれど、冬葉に限ってそんなことあり得ないんだよ。何があったんだろう...お前はこういうトラブル一切なかったし...どうしたもんかな...」
「へぇ~意外。」
「何?」
「いや、何か...普通の親みたいだったから。」
「お前、ケンカ売ってんの?」
「僕がそういう無益なことしないって、一番知ってるでしょ?」
「まあ...ね。」
「思春期の子供ってワケじゃないんだから、それとなく、しれ~っと聞いちゃうのが一番良いんだよ。で、冬葉のこと突き落とした子の名前は?」
「理君。」
「オッケー。任せて。」
「任せてって、お前...こら!真!」
「冬葉!ごめん。夕飯作り、ちょっと手伝って!」
葉祐を無視して、冬葉をキッチンに呼んだ。冬真も冬葉が心配なのか、さっきからそばを離れない。男が四人、キッチンに並ぶのは無理なので、冬真を向かいのカウンターに座らせる。僕は大丈夫と言わんばかりに冬真の背中を撫でた。
「ふゆくん、なんのおてつだい?」
「レタスちぎってくれる?お父さんはミニトマトのヘタ取り。ああ、それと冬葉、レタスは...」
「わかってるよ。とうまパパのぶんは、ちょっとちいさくでしょ?」
当然でしょ?と言わんばかりの顔をして、冬葉はレタスを小さくちぎっていく。
「うん、そう。」
「ありがとう...冬くん...」
冬真がお礼を述べると、冬葉はちょっと得意気な顔をした。
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