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不安げな女神 #1 side Shun

冬葉が怪我をしたと聞き、手作りのアイスクリームを手に里中邸へ向かう。もうすぐ夕飯時だが、冬葉が食後のデザートとして食することを考えると、この時間になるのは致仕方ない。真祐が幼稚園に上がった頃に購入したアイスクリーマー。もう何年使っているのだろう。マウンテンバイクをこぎながらそんなことが頭を過った。今でこそあまりないが、真祐はよく熱を出す子供だった。高熱でも食べやすく、少しでも栄養のあるものを考えた結果、購入したのがアイスクリーマーだった。真祐に対して、冬葉はとても丈夫な子で、アイスクリーマーの登場は数回。しかし、冬真さんが心のバランスを崩すと、冬真さんと冬葉を隔離しなくてはならず、その時は、おおよそ俺の家で冬葉を預かった。誰が悪いわけでもない、ましてや、冬葉には何の落ち度もない。心のバランスを崩した冬真さんは、冬葉を見ると自傷行為を繰り返した。その因果関係に気が付いたのは最近で、ドクターによると、あまりにも自分と似すぎている冬葉を見ると、現実なのか、過去なのか、夢を見ているのか分からなくなり、意識が混濁してしまうのではないかという見解だった。しかも五歳という年齢は、冬真さんが母親の手によって命を落としそうになった歳で、それが引き金になって、自己肯定が一切無くなった時期でもある。自傷行為はそれが大きく関わってるらしい。不憫でならない冬葉に、俺はよく、自宅でアイスクリームを作ってやった。冬葉はとても喜んだ。冬葉が家にいる時、俺は最善を尽くした。冬真さんの中で、別荘地の診療所がトラウマの地になってしまったように、俺の家が冬葉のトラウマの地にならないように…と。 玄関で呼び鈴を鳴らしているのに、一向に誰も出る気配がない。嫌な予感がした。何かあったのだろうか?三回目の呼び鈴を押そうとした時、やっと扉が開き、出てきた人は意外な人だった。 「冬真さん!」 「しゅん...すけさん...」 俺の名を呼んだ冬真さんは、瞳を潤ませ、何だかとても疲れたような表情をしていた。 「大丈夫ですか?どうされたんです?葉祐さんは?真は?」 「しゅんす…けさん...しゅん…け...さ…ん…」 冬真さんは驚くほど弱い力で俺の腕を取り、俺を家へと招き入れた。

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