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予測不可能 #1 side Shun

睨み合いが続く戦火の渦の中に、冬真さんはあまりにも場違いにひょこひょこと入っていった。冬真さんの登場により静まり返るその中で、冬真さんは一番最初に葉祐さんの手を引いた。 「ようすけ...こっち...」 葉祐さんをソファーの前に立たせ、それから元の場所に戻り、 「真くんは...ここ...」 今度は真祐を葉祐さんの隣に立たせた。冬葉も同じ様に真祐の隣に立たせたが、 「冬くんは...ソファーのうえ...」 冬葉だけにはソファーの上に立つように言った。 「でも、ソファーのうえは、いつも、ようすけパパにたったらダメっていわれるよ。」 普段、禁止されていることをするようにと促され、冬葉は戸惑っていた。 「そっか...ごめんね。でも...今だけ...パパのために...いい?」 「うん!」 冬葉は目を輝かせてソファーの上に立ち上がり、男三人が横一列に並んだ。一体何をするつもりなのだろうか?冬真さんは時々、予想もつかない言動をすることがある。いつだったか、昔、金髪にしていた航を坊主頭にしようとしたことがあった。航にしてみたら、黒髪に染め直すことは何ともなかったのだろうが、当時、それをよく注意していた葉祐さんの手前、引くに引けなくなり、意地を通していたところがあった。しかし、冬真さんは染めるのが嫌なら切ってしまえば良いと考えた。勿論悪気など全くない。冬真さん以外の誰もが唖然とした出来事だった。あの時の印象がかなり強いのか、二人で酒を酌み交わす時、航は今でもよくこの話をする。こんな風にこちらの予想を遥かに越える言動が、生物学上の息子である冬葉にも多々見られ、血は争えないと常々思う。そんなことを考えていると、急に手を取られた。 えっ? 「しゅんすけさん...こっち...」 冬真さんは俺の手を引き、冬葉の隣に並ばせた。これで男四人が横一列に並んだ。冬真さんは少し離れて四人を見渡せる場所に立ち、四人の顔を確認し微笑むと、また葉祐さんの前に立った。 それから… 葉祐さんから順に一人一人を見つめ、一人一人とキスをした。冬葉の番が終わり、まさかとは思ったが、そのまさかが起きた。冬真さんは三人と同様に俺を見つめ、そしてキスをした。俺は驚きを隠せず、すかさず葉祐さんに視線を送った。葉祐さんも驚きの顔をこちらに向けていた。 「ぼく...かぞくだいすき...みんなあいしてる...みんなかぞく…だから...ぼく…みんなとキス...します...」 そう言った後、冬真さんはペコリと頭を下げた。 その場にいた冬真さん以外の全員が言葉を失い、里中家のリビングがしんと静まり返った。その静寂を打破したのは真祐だった。 「あはははは...あははははは...」 「真くん...?」 その笑いの意味が理解できず、冬真さんは小首を傾げていた。真祐は冬真さんの前に立つと、そのまま冬真さんを抱き上げた。 「あははははは...びっくりさせちゃったね。ごめん。いやぁ~僕のお父さん最高!僕もお父さん愛してるよ!」 「あー!しんちゃん、ずるい!ふゆくんも!」 真祐は冬真さんをソファーまで運び、冬葉の隣に座らせた。 「パパ!ふゆくんは、しんちゃんみたいに、だっこできないから、ふゆくんともういっかいちゅーしよう!」 「はい。」 冬真さんは冬葉の唇をじっと見つめ、言葉が理解できたのか瞳を閉じた。 「ふゆくんも、パパあいしてます。」 冬葉は冬真さんにキスをし、そして、冬真さんを抱きしめた。冬葉が離れると冬真さんは、葉祐さん、真祐、俺の三人にも二回目のキスをした。予測不可能な女神の天然過ぎる行いに、先程まで戦場と化していた里中家のリビングは、一気に幸せな空気に包まれた。 そして… その晩、子供達に冬真さんと寝室を占拠された葉祐さんと酒を酌み交わし、深夜まで彼を慰めたのは言うまでもない。

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