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天使の企み #2 side Y
家までの帰り道、冬葉と手を繋いで歩く。繋いでいない方の手で、さっき作ったばかりの折り紙のチューリップを握りしめ、冬葉は俺に何度も尋ねる。
「とうまパパ、よろこぶかなぁ?」
「喜ぶよ。きっと。」
その度に冬葉はうふふと笑う。折り紙のチューリップのプレゼント。これが冬葉のいう『思い付いた良いこと』なのだろう。いかにも園児の考えそうなことだと、そう高を括っていた。しかし、詰めが甘かった。俺はすっかり忘れていたんだ。その園児が、こちらの考えの遥か上をいく冬葉だってことを...
「ただいま~!とうまパパ~」
帰宅し、冬葉の第一声から少し時間を要して、真祐に支えられるようにして、冬真が玄関に現れた。今日の園でのことを気に病んでいたのか、思った通り、顔色が少し悪かった。
「冬くん......おかえり...」
冬真の言葉に冬葉はニッコリと微笑み、玄関で立て膝をつき、折り紙のチューリップを冬真に向かって差し出した。さながら、おとぎ話に出てくる王子様のように。
「とうまパパ!ふゆくんとけっこんしてください!」
えっ.........?
冬葉の突然の求婚に、その場にいた家族全員が固まった。そんな空気もお構いなしに冬葉は続けて言う。
「ふゆくんがまいにち、パパをニコニコちゃんにします。ピーマンものこしません。だから、ふゆくんとけっこんしてください!」
「ちょっと待った!」
真祐が突然言い出し、冬葉の隣で同じように立て膝をついた。それから、驚く俺と冬真にウインクをした。
「冬真パパ!僕もパパをニコニコちゃんにします。ピーマンはもちろん食べられます。だから、真君と結婚してください!」
普段言わない『パパ』と『真君』。なるほど...真祐のちょっとしたいたずら心か…
「しんちゃんズルい!ふゆくんのほうがさきだったよ!」
「こういうのは後も先もないんだよ。決めるのは冬真パパだからね。さぁ、冬真パパ、どっちか選んで!」
戸惑う冬真に真祐は、冬葉を選ぶように合図を送っている。冬真はそこで安心したように微笑み、合図通り、冬葉のチューリップを受け取った。
「やったー‼」
冬葉は嬉しそうにその場でピョンピョンと飛び跳ね、真祐は悔しそうに地面を叩く素振りを見せた。
「とうまパパ、ふゆくん、ぜったいパパをニコニコちゃんにするからね。」
「うん...」
「それから...とうまパパはかわいいから、けっこんしきはリボンのついたピンクのドレスがいいよ!あーシンデレラみたいなのもすてきかも!」
うっとりと冬真のドレス姿を夢見る冬葉に、俺と真祐は笑いを堪えるのに苦労し、冬真は苦笑いをした。
「ふ...冬くん...」
「なぁに?」
「けっこんしきは...冬くんが...もう少し大きくなってからに...しようか?」
「えー?なんで?」
「えっと...それは......」
「だってさ、パパはかわいいドレスなんでしょう?だったら、冬葉だって王子様みたいな格好の方が素敵だと思うよ。あの洋服は背が高い方がもっともっと格好良く見えるし...」
言葉に悩む冬真に、真祐が助け船を出した。
「そうだね!そうすれば、ダンスのときパパをだっこできるね!ふゆくん、しんちゃんぐらいおおきくなったら、パパとけっこんする!」
真祐はいよいよ笑いを堪えきれず、
「完全におとぎ話の舞踏会を想像しているね。」
笑いながらそう耳打ちした。
その夜……
「重婚は犯罪だぞ。冬真...」
組敷いた冬真の耳元で冗談混じりにそう囁いた。
「うふふ...その前に...きんしんそうかん...もっと...おもい...つ...み......あんっ...」
冬真の耳たぶを甘噛みすると、冬真は一つ短く啼いて、その甘美な刺激から逃れようと、ベッドの海を泳ぎ出す。それを許さじと、俺はキスを繰り返し落とす。
唇...首筋...徐々に下降し、熟れた赤い実を啄んだ。
「やいて...るの...?はあっ...あん...」
「妬いてるよ。最強の敵だからね。怖いもの知らずで、真っ直ぐで。」
「本当...あいしているけれど......あっ...あんあん...ぼくの中に入っていいの...一人だけ...だから......あんっ...」
「もお…お前ってヤツは…どれだけ俺のこと煽れば気が済むんだよ…」
「あああ…あん…ああん…」
無意識に俺を煽る冬真と、いつでも冬真に夢中で、歯止めが効かなくなる俺。二人で眠りに就いたのは、東の空が白々とし始めた頃だった。
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